玉山銀行の頭取である黄男州氏によると、2020年5月に外資企業からの問い合わせがあったという。その内容は、玉山フィナンシャルホールディングスが気候変動に関する財務の情報の開示状況や、CSR報告書においてサスティナビリティ会計基準の開示有無などESGに対し焦点を当てたものであった。ウィズコロナ時代に、外資企業は持続的な発展と社会的責任に特段の関心を持ち、ESGが株式を投資する時の重要な条件の一つになった。ESGが台湾企業の発展に影響することが益々目立ってきて、重要視すべきものとなった。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものである。これは、従来型の企業経営の以外に、企業が社会及び環境に対する責任も考慮し、投資によって社会と環境を改善し、社会の持続可能な発展を促すものである。例えば地球温暖化、気候変動と汚染、ジェンダー平等、労使争議等は、全てESGの範囲に収まる。このような社会、環境そしてガバナンスにかかわる議論は、財務諸表から企業に対する影響を容易かつ直接的に見出せないかもしれないが、社会の人々と密接に関係するため、結局その結果は企業にフィードバックされ、企業が適切に対応しなければならないテーマになっている。
現代企業の経営管理において、台湾企業にせよ外資企業にせよ、多くの企業に対し、ESG評価は企業連携の必要条件の一つとする動きが始まり、ESG観点からの管理を重要視して初めて投資が可能になると連携する対象企業に伝える。例えばナイキもアップルも、海外請負業者の社員に対する福利厚生、労働安全マネージメント、セクハラ防止、労働時間制限等の労働問題のテーマに対し関心を寄せている。さらに、企業はESGを念頭に社会的責任報告書を作成することにより、今までの労働事件と労働者権益問題、すなわち、社会からの搾取だと疑われた悪名を改善した。また、台湾の多くの化学工業は下請けの取引先までESGを要求し、その取引先に危険性を有する化学製品を引き渡す時、公共安全の専門家を派遣し、一定の安全措置を講じる。これによって、労働事故が引き起こされる経営問題と賠償責任が減っていき、取引先は労働安全の管理システムを有効に改善しながら、労働者権益も保障することができる。
一例を挙げると、台湾繊維業者Z社は、近年東南アジアの工場にてセクハラ事件及び労働法令違反事件が多発したため、結局Z社の取引先が、一定期間内に東南アジア工場でのセクハラ事件の改善及び労働法令の順守をしない場合、Z社の仕入れを減少または停止するようZ社に要求した。Z社はこの状況の深刻さに気づき、直ちに関連法令の要求を満たし、期限までに問題を改善した。これにより、取引先がESGに対する重視と要求に合致した。
企業自身のESGに対する努力のほか、政府の政策方針もESG観点の重要性をさらに引き立たせた。EUやオーストラリア等多くの国は、企業に炭素税を課している。各国も労働環境の安全や労働者の権益保障、汚染防止等に対する規範も厳しくなって、かつ検査も強化されている。
以上から、ESGはスローガンにとどまらないことが分かる。企業のESGに対する実践は、コスト削減や取引先と社員の満足度に対し、効果があるに限らず、連携企業の好評を博すこともできる。
企業はESG評価を高めるために、チャリティーイベントや寄付活動に参与し、企業イメージのPRを行うだけではなく、もっと大事なのはコンプライアンスの強化である。すなわち、企業は労働者や環境、ガバナンス等にかかわる法令規範をもっと積極的に理解し、熟知しなければならない。その上で、企業の措置を定期的に検討し、企業の行為が現行法令に合致していることを確かめることが重要である。これによって、不注意に法律に違反してしまい、主務官庁に処罰されることや企業イメージを傷つけることを回避することができ、ビジネスチャンスを逃がすことや将来の経営に支障をきたすことからも避けられる。
この文章は「名家評論コラム」に掲載。
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