国産ワクチンが海外製ワクチンと比較されることによって緊急使用許可(EUA)の基準とすることは、海外製ワクチンの特許権を侵害する恐れがあると先日報道された。これは、特許権侵害の比較原則を誤解したようである。
特許権侵害の有無を判断するには、まず特許権の内容及び範囲、次にどの行為や商品が被疑侵害物になったかを確認しなければならない。
海外製ワクチンの特許権は、通常ワクチンの成分構成若しくはその比率、ワクチンの製造方法、医療用途及びその機能のメカニズム等を含んでいる。同意なしに自ら海外製ワクチンを販売、製造又は使用することは、それの特許権を侵害する可能性がある。しかしワクチン接種者の血清を抽出し、データ分析を行うことは、ワクチン自身とは関係のないことであり、海外製ワクチンの特許権の範囲に入る可能性が低い。
衛生福利部が公開した情報によると、国産の新型コロナワクチンの治療効果を評価する基準は、免疫ブリッジング試験(immuno-bridging)を採用している。即ち65才以下の試験参加者において、国産ワクチンとアストラゼネカ(AZ)製ワクチンの二つのグループに分け、2回目の接種後28日目の血清中和抗体の数値を比較することである。アストラゼネカ(AZ)製ワクチンの情報源は、アストラゼネカ製ワクチンを2回接種済みの桃園病院の医療関係者200名から血清を抽出し分析したものである。
ここで関連する行為は、二つの部分に分けられる。第一はアストラゼネカ製ワクチンを打つ行為であり、これはアストラゼネカ社が同意してからワクチンを提供したので、ワクチンを打つ行為自身は権利侵害にならない。第二部分は接種者の血清を抽出し、抗体を分析する行為であり、血清抽出は通常当事者が同意してから行うもので、血清に関する情報も本来ワクチンの製造会社に属するものでなく、ワクチンの成分、製造方法又は用途とは関係ないため、海外製ワクチンの特許権を侵害する可能性は極めて低い。
また、特許権侵害ではないと抗弁する理由には、「特許権の消尽」又は「試験又は研究のためにする特許発明の実施」がある。特許法において、この二つの理論につき多くの見解があり、国内での消尽若しくは国外での消尽、そして最近ジェネリック薬品の特許関連訴訟事件において、被告のジェネリック薬品製造メーカーは「試験又は研究のためにする特許発明の実施」を主張することができるか等を含み、更なる討論が必要である。しかしながら、免疫ブリッジング試験とは、接種者の血清を抽出して分析することであり、ワクチンの販売、製造又は接種することではないので、原則としてそのワクチンメーカーの特許権と関係なく、敢えて「特許権の消尽」又は「試験又は研究のためにする特許発明の実施」を提出する必要もない。
特許権侵害を判断することは莫大な専門知識を要するので、特許権侵害の争議に立ち向かうとき、プロフェッショナルの意見に充分に耳を傾けることは、自分の権利を保護するためになる。
この文章は「名家評論コラム」に掲載。https://view.ctee.com.tw/legal/30387.html