裁判所は、台湾のある暗号資産プラットフォームの責任者が違法な資金獲得活動にかかわっている容疑で、その犯罪容疑が重大で逃亡し、又は罪証を隠滅するおそれがあるため、未決拘禁かつ接見等禁止という決定を下した。このニュースを見た業界はその場で当惑し、司法実務の見解が変わったか、暗号資産業務の適法性に対する審査が厳しくなったか、不安である。しかしながら、今までの実務見解を見れば、基本的に一貫していることは分かる。業界の懸念は、条項の文言に対する解釈の誤解かもしれず、今までの実務見解を深く研究しなかったせいでもある。
銀行法第29条第1項、同法第29条の1、同法第125条第1項では、次のようなことを規定している。「法律に別に定められている場合を除き、銀行でないものは預金受取、信託資金や公衆財産の運用受託、国内外の為替業務を行ってはならない。」、「貸付、投資金受取、株主に入れる、又はその他の名義で多数若しくは不特定な人に対し、金員受取若しくは資金吸収を行い、明らかに元本に相応しないボーナス、利子、配当若しくはその他の報酬を約定、又は給付する場合、預金受取に見なす」、「第29条第1項規定に反する場合、3年以上10年以下の懲役に処する。新台湾ドル1千万以上2億元以下の罰金に併科することができる。その犯罪により獲得した財物や財産上の利益が新台湾ドル1億元以上に達する場合、7年以上の懲役に処する。新台湾ドル2千5百万元以上5億元以下の罰金に併科することができる」。
言い換えれば、プラットフォーム業者が多数若しくは不特定な人から金員受取や資金吸収を行い、明らかに元金に相応しないボーナス、利子、配当若しくはその他の報酬を約定、又は給付する場合、預金受取に見なされる可能性がある。当該プラットフォーム業者が銀行若しくは法律により特別に授権されたものでなければ、自然に銀行法第125条第1項の処罰を受ける可能性がある。
今まで、「暗号資産」が「法定貨幣」ではなく、銀行法でいう「金員」や「資金」に該当しないので、暗号資産業務に銀行法を適用できないと考える業者がいる。しかしながら、銀行法第125条は2019年4月17日に改正され、その改正理由において、次のように特別に説明している。「一、近時、違法な資金吸収事件が多発しており、犯罪の手口も変化しつつある。その例として、民間の相互扶助組織(頼母子講等)を通し資金を違法的に吸収し高い利回りを宣伝する、又はホールディングカンパニーの顧問料、ねずみ講の会員勧誘、ゲームのトークン、仮想通貨の『PEAK COIN』や『DARK COIN』等、高利子(ポンジ・スキーム)や講座に名乗る、元金保障や利回り保証、稼げる保証等が挙げられる。そういう投資契約を勧誘し、数十億に上る被害が報告されている。…」
上掲から分かるように、違法の資金吸収事件が高額の利回りやゲームのトークン、仮想通貨等をもって契約を勧誘するものであり、吸収する規模が大きければ大きいほど、社会・金融秩序への影響が重大になるため、当該条項が改正された当時、処罰対象となると認められた。したがって、銀行法でいう「金員」受取や「資金」吸収、又は「元本回収若しくは元本に相当、元本より高い金額を給付する」と約定する場合、当該金員や資金、元本の流通・回収は、実際の現金通貨を直接に交付することを必要としなく、ゲームのトークンや仮想通貨等をもって代わることもできる。
以上で、法律用語が難しくてわかりにくく、立法理由や主務官庁の解釈を参考しないと、全般的に把握することができない時もある。経営者には、法令を誤解して処罰を受けることを避けるために、詳しく理解することをアドバイスする。
この文章は「名家評論コラム」に掲載。https://view.ctee.com.tw/tax/48054.html