「工商時報_名家評論コラム」:米国での新たな輸出規制措置、企業はどう対応すべきか

2020-05-23

今年(2020年)4月28日に米国商務省は輸出規制措置を改正した。この改正では、中国、ロシア、ベネズエラ3国で集積回路等特定製品を販売する会社に対し、事前申請を行い、許可を受けた後、はじめて輸出できるとされた。それと同時に、いくつかの例外規定も廃止された。

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今年(2020年)4月28日に米国商務省は輸出規制措置を改正した。この改正では、中国、ロシア、ベネズエラ3国で集積回路等特定製品を販売する会社に対し、事前申請を行い、許可を受けた後、はじめて輸出できるとされた。それと同時に、いくつかの例外規定も廃止された。

改正の内容を概略すると以下の通りである。

(1) 軍関連のエンドユーザー(Military End User “MEU”) への許可の厳格化及び規制対象品目の拡大。

(2) 民間エンドユーザーの例外規定(License Exception Civil End Users “CIV”)の廃止。

以上の改正は、2020年6月29日に施行される。

1. 軍関連のエンドユーザーへの許可の厳格化及び規制対象品目の拡大(Expand restrictions of “MEU”)

中国の軍事機関と民間工業は益々一体化し、境目が曖昧になっていることに鑑み、米国商務省産業安全保障局(BIS)はやむを得ず新しい措置を講じなければならないことになった。米国の輸出規制EAR (§744.21)によると、中国、ロシア、ベネズエラ3国と取引する際は、規制許可と予期デューデリジェンス(due-diligence)などの措置を講じることになった。その範囲は国防関連事項に限らず、商業技術や貿易などの分野にまで広がっている。

当該規則の改正ポイントは、以下の通りである。

(1) 「軍事エンドユース(Military End Use)」の定義が拡大され、米国軍需品リストにある、又は輸出規制品目分類番号(ECCN)においてA18で終わる番号や600シリーズの軍事用品の操作、取付、保守、点検、修理、更新、開発、生産等を支援するあるいは協力する間接行為も含め、上述のいずれか一つの要素が、「軍事エンドユース」という要件適用のトリガーとなる。

(2) 中国の「軍事エンドユーザー」との取引に関する許可要求の増加

「軍事的最終用途(エンドユース)」の要件に関する改正により、軍事エンドユーザーへの制限が拡大された。すなわち、「個人又はエンティティの行動・機能が軍事的最終用途を支援する」場合には、BISの輸出許可が必要となる。

(3) 当該規則には、米国の新しい輸出規制品目の一部が軍事エンドユーザーの制限品目リストに加えられた。

(4) 新しい規則では、価格にかかわらず、中国へ輸出される物品はすべて電子輸出情報(電子版輸出申告書、EEI)に記載し提出しなければならないと要求した。

したがって、中国の取引先が軍事用品の開発、生産や運営の支援あるいは協力行為があることを知った、もしくは知り得た場合には、単純な商業品目であったとしても、取引先に対し厳密なデューディリジェンスを行わなければならず、BISの許可を得る必要がある。

台湾において影響のある産業は何か

今のところ、影響がありうるのは半導体、ハイテク、エネルギー、航空宇宙など事業分野である。中国の「軍事エンドユース」又は「軍事エンドユーザー」に対し、流行性消費類に属する設備(携帯電話、ノートパソコンなどスマート製品を含む)とその部品、材料、化学製品、技術、ソフト、器具などが含まれる可能性もある。取引の対象が中国の「軍事エンドユース」又は「軍事エンドユーザー」と認定された場合には、前述の産業及びその製品は新しい規則が適用される。

2. 民間エンドユーザーの例外規定(Civil End Users “CIV” )の廃止

本来米国輸出規制に定められた「民間エンドユーザーの例外規定」によると、米国再輸出規制に関連するリストの「民間エンドユーザー」及び「民間エンドユース」の物品を、D1に列挙された諸国(中国を含む)へ輸出、再輸出、国内転送することが許可されていた。しかしながら、この例外規定が廃止された後(2020年6月29日以降)、輸出規制リストにあるあらゆる物品は許可を申請しなければならないことになっている。これは、今まで「民間エンドユーザーの例外規定」に基づいて輸出され、かつ現時点で他国で在庫し、まもなく再輸出や転送する物品も含まれる。

影響のおそれがある産業へのアドバイス

このように、改正前の米国輸出規制は特定の規制物品を除き、国外で生産される軍事エンドユース物品について、当該物品に含まれる米国製品の価額が25%以下、又はすでに輸出許可を取得した場合には、中国やロシア、ベネズエラ等D1に列挙された諸国へ輸出、再輸出、転送することができた。

しかしながら、前述の改正を経て、数多くの製品が規制され、本来軍事的最終用途の物品ではなくても、直接又は間接的に軍事エンドユースを支援あるいは協力の性質があるため、米国の輸出規制が適用されることになる。また、本来軍事的最終用途ではない物品も、新たに米国軍需品リストや輸出規制品目分類番号に追加されたことにより、規制されることになる。

そのため、台湾企業がこういった物品を上記諸国へ輸出、再輸出又は転送する場合には、その取引先に向けたデューデリジェンスを行うことにより、実質取引対象が軍事エンドユーザに該当するか否かを確認するべきである。また、この調査義務は、物品の売買完了で終わるわけではなく、こういった調査義務と許可要求は、ヨーロッパやその他の地域の中資系企業との取引にも適用される。

したがって、台湾企業は、新しい規則が施行される前に、リスクを最低限に抑えるよう、その改正に影響される物品の取引をスピードアップ又は終了し、かつ施行日までにすべての出荷を完了すべきであろう。

(この文章は「名家評論コラム」に登載されたものである。https://view.ctee.com.tw/economic/19854.html )