A社で研究開発部の副部長として働いでいた元従業員が、A社で20年間勤務しており、最近競合関係にあるB社は更なる高い職位と報酬をもって、元従業員をヘッドハンティングした。A社の社長はこのことを知った後、元従業員を引きとめたが、思いとどまらせることができなかったので、競業避止契約に従い、元従業員にB社へ転勤しないように要求した。しかしながら、元従業員はこの要求を無視した。これに対し、A社は如何に法的救済を求めるか。
競業避止訴訟の勝負のカギ
競業避止訴訟の目的は、労働者の競合相手への転勤を禁止することである。その勝負のカギは、使用者と労働者が締結した競業避止契約の効力の有無である。労働基準法第9条の1によると、競業避止契約は次の要件に合致しないと、有効性がない。(一)使用者には、保護すべき正当な営業利益が存在する。(二)労働者が担当する役職や職務は、使用者の営業秘密を接触、又は使用することができる。(三)競業避止の期間、地域、職業活動の範囲及び就業対象は、合理性を超えていない。(四)競業行為を従事できないため損失を被る労働者に対し、使用者は合理的代償措置を講じる。また競業避止の期間は、最長2年間とする。
また、実務上において注意すべきのは、労働基準法第9条の1は、2015年12月16日に公布され、施行されたことである。これに対し、企業の営業秘密を握っている多くの管理職は、その在職期間が通常10年以上である。すなわち、これらの管理職が企業と競業避止契約を締結した時、労働基準法第9条の1はまだ制定されなかったので、その競業避止契約の内容も当然労働基準法第9条の1に合致しないのである。にもかかわらず、実務の見解によれば、こういった早期の競業避止契約の有効性にも、労働基準法第9条の1の要件に従い判断するので、注意しないといけない。
また、使用者にとって、裁判に時間がかかるので、従業員が競業避止契約を違反した行為を即時に差し止めることができない。このような困りごとを解決するため、使用者は、「暫定的状態を定める処分(仮処分)」を通して緊急的救済を求めることができる。すなわち、使用者は、裁判所に対し、元従業員に一定期間内に元使用者の競合他社に転勤しないよう申請したうえ、本案競業避止訴訟を提起できる。「暫定的状態を定める処分」について、裁判所は本案訴訟のように実質的な審理を行わないため、その結果は通常使用者に有利である。そのため、使用者が裁判所に対し「暫定的状態を定める処分」を申請することは、労働者を競合他社への転勤を「暫定的に」禁止することができ、競業避止の目的を達するのである。
前掲の例において、元従業員が競業避止の約束を無視しB社へ転勤した行為に対し、A社は競業避止訴訟を提起することができる。また、訴訟が確定する前に、元従業員がB社へ転勤したせいで訴訟の実益を失うことを避けるため、A社は、裁判所に対し、「暫定的状態を定める処分」を申請し、元授業員のB社への転勤をしばらくの間に禁止することができる。しかしながら、元従業員がA社に入社した時、労働基準法第9条の1はまだ制定されなかったので、本案の競業避止訴訟の勝負のカギは、A社が法改正に従い、従業員と新規の競業避止契約を締結し、労働基準法第9条の1の規範に合致するかどうかである。言い換えれば、契約は締結してから「一生有効」ではない。改正法に従って、定期的にチェックし調整しないと、契約にあるべきな効力は発揮できない。
この文章は「名家評論コラム」に掲載:https://view.ctee.com.tw/legal/34650.html