同族企業は世界中の企業の90%を占めており、世界中の経済活動において非常に重要な役割を果たしている。その中で、そうでない企業よりよく運営され、より長く存続する同族企業もある。そのため、経済の基礎とされている商業社会において、事業承継に対し対策をきちんと講じらないと、承継にあたって経営権を奪われ、経営成績が下がる等の問題が発生するかもしれない。
統計によると、台湾の同族企業の多くが経営権と共に自社株式を子どもに承継させるつもりだが、ごくわずかな企業しか健全な事業承継対策を講じていない。このことから分かるように、同族企業の経営者は台湾の経済に力を入れている時、事業承継対策と後継者を育てることを予め計画する重要性を意識しなかったようである。
金融監督管理委員会が2021年から2023年までの間に推し進めているコーポレートガバナンス3.0ロードマップは、「董事会の職能を強化して企業にとっての持続可能な価値を高める 」、「情報の透明性を高め、持続可能な経営を促す」、「利害関係者との意思疎通を強化し、良好な交流ルートを築く」、「国際規範に合わせ、受託責任をリードする」、「持続可能な企業統治文化を深め、多元的な商品を提供する」を5本の柱としている。
董事会の構造と運営を強化する部分について、董事会の多様化と事業承継対策を特に強調しており、「取締役及び重要管理階層の承継対策」を評価指標に取り入れると同時に、企業に董事会メンバー及び重要管理階層の承継対策の有無及び企業サイトや年次決算書においてその状況を開示しているか否かを確認する。
台湾の同族企業の多くは「親族内承継」を採用しており、子供の中から有能者を選び、同族企業の後継者として育ち、企業の経営権を自社株式と一緒に子供に承継させるのが普通である。この方式において、同族企業の経営者は家族の次世代を有能な後継者に育てることに力を注ぐと同時に、今後10年、20年自社の発展にも注目すべく、同族企業の重要な管理階層を養成しなければならない。これによって、将来重要な幹部として家族の次世代と共にコーポレートガバナンスを行うことができるだけではなく、家族の次世代が承継したくない、若しくは有能者がいないとき、後継者のない状況を防止することができる。
一、 親族内承継の後継者育成:
家族の次世代はみんなが後継者になり得る才能や経営能力を備えているわけにはいかないので、百年の歴史を有する同族企業の多くは、「ファミリーの“ルールブック”」と「ファミリー役員会」をもって、後継者育成の指導原則として事業承継に反映させるのである。「ファミリーの“ルールブック”」を通して、「同族企業の承継及び人材育成準則」を制定し、ファミリー役員会が今後10年、20年の発展計画に基づいて、後継者を育てていく。
二、 重要な管理階層の承継計画:
「千名の兵士を募集できても、一人の将軍(リーダー)を探すのが難しい」ということわざの通り、同族企業の経営者は家族の後継者を養成することにあったて、家族の次世代が承継したくない、若しくは能力がないリスクに注意しなければならない。これに対し、同族企業は今後10年、20年の発展戦略に重点を置くとよい。上級管理職や董事会メンバー等のキーポジションに対し、タレントプールを立ち上げ人事マネジメントをしなければならず、経営幹部を養成することを企業の管理階層の目標とするべきである。
言いかえれば、家族の次世代に能力があって承継する意向もあれば、同族企業が養成したキーポジションの人材は将来家族の次世代と共に企業を統治する重要な幹部になる。その反対に、家族の次世代が承継したくない、若しくは能力がないとき、同族企業が育ててきた幹部人材も後継者候補になり得るのである。
以上で、同族企業を持続的に経営させ、先代が残した事業基礎を適切に承継するために、事業承継対策をいち早く計画しなければならない。
(この文章は「名家評論コラム」に掲載。https://view.ctee.com.tw/business/48466.html)