2022年11月30日、米国商社OpenAIがChatGPTという自然言語生成を行うチャットサービスをリリースし、その影響は人類史上第4回の産業革命の幕開けさえと言える。人工知能(AI)が数十年の研究開発を経て、これから数年間で徐々に成熟してきた技術は人類社会と経済活動を変え、それに伴う様々な法的トラブルも次第に浮かび上がってくるでしょう。目下、生成式AI技術の使用者がよく遭う法的リスクは、次のとおりである。[1]
一、著作権侵害の可能性がある
生成AIはより正確な内容を出力するため、入力された様々で膨大なデータを解析しており、主にディープラーニング(深層学習)技術に頼っているのである。その学習において、著作権法に守られている著作を使用する確率が非常に高いため、生成された内容が既存の著作物に酷似している可能性も高い。ユーザーが当該生成AIがアウトプットした内容をビジネス利用等非合理的な使用範囲に用いた場合、著作権者の同意・許諾を取得していなければ、関連の民事・刑事責任を問われる可能性はある。
また、生成AIが出力した成果物は、著作権法第3条でいう「独創性、創作非容易性を有しており、著作権法に守られる著作」に該当するか、又は当該成果物の著作権は何者に帰属するか等、疑問だらけだ。その成果物はAIが創作したか、それともAIを利用した者が創作したか、紛争になりやすいため、この真新しい分野の発展について注目していただきたい。
二、個人情報に関するプライバシー問題
生成AIを利用する際、自分の個人情報の安全を注意すべきである。生成AIが現存の様々なデータを絶えずに解析することを通して学習しており、ユーザーが入力した色々な情報も当然含まれている。仮にその中にユーザーの個人情報若しくは他人の情報や会社の営業秘密があれば、悪用されて漏えいされる可能性がある。今年4月、OpenAIは、すべてのChatGPTユーザーがチャット履歴をオフにすることができる機能(学習拒否機能)を通して、自分の個人情報がOpenAIのモデルのトレーニングや改善に使用されず、履歴サイドバーにも表示されないと示した。ただし、チャット履歴を無効にしても、入力した内容は30日間保持される。ユーザーは各社の生成AIアプリをダウンロードする前に、当該アプリの使用者協議とプライバシーポリシーをよく読むことをアドバイスする。
三、出力される情報に正確性・信憑性が不足
現在生成AIプログラムが市場参入の初期段階にあり、多くの機能がまだ整備されておらず、生成された情報は必ずしも正確とは限らない。例えば、今年6月ニューヨーク州のある弁護士がChatGPTを利用し訴状を作成したが、その中で引用された法廷書類はなんとAIが生成した架空の裁判所判例を含めていた。その弁護士は確認せずに本当の判例であると勘違いし使用したので、裁判所から懲戒処分を受けた。生成AIの便利性を楽しんでいる時、その内容に誤情報の有無をよく確認すべきである。生成AIを活用して重要な書類を作成する、又は情報を検索する際には、その後より多くの金と時間を費やすことを防止するために、生成AIが提供する全ての情報に対し、ファクトチェックを行う必要がある。
AI関連技術は、今後20~30年の科学技術分野と人類社会の経済活動を変えるだろう。しかしこの今までになかった科学技術の発展に対し、予見できない法的リスクも避けられない。ユーザーにとって、すでに知っている法的リスクを注意深く防止するほか、新技術に伴う予見できない法的リスクに対し、常に今後の動向を注視する必要がある。そうすれば、最新技術がもたらす陣痛を減らし、AIの健全な発展を確保できるはずである。
(この文章は「名家評論コラム」に掲載。https://www.ctee.com.tw/news/20230926700084-431305)