コーポレートガバナンスは、利益を促進し不正を防止するのを重要視する。不正を防止する面では、不正監査人協会の統計によれば、企業の年間収益の5%が汚職者によって盗まれるという。そして不正が発見できたのは、おおよそ(約43%)従業員、サプライヤー若しくはクライアントによって通報されたからである。したがってコーポレートガバナンスと信義誠実のある経営に対して、内部通報制度がどれぐらい重要であるかが伺える。また、主務官庁が上場・店頭公開企業のコーポレートガバナンスを評価する「コーポレートガバナンス評価指標4.16」でも、次のように通報制度を言及している。「企業は自社のHPにおいて、違法(汚職を含む)や不道徳行為に対する社内と外部人員の通報制度を確立し開示しているか。」
■部内者の通報がなければ、良い会社に間違いない?
それでは、通報制度をどう社内に導入すればよいか。注意しなければならない重要事項は何があるか。次の実話を通して、理解していただけると思う。
夜遅く、シャオホイさん(仮名)は1人で家の暗い隅でひるみ、涙をずっと流していた。電話をかけるべきかどうかを悩みながら、痛みと憎しみ、そして悔しさと闘っていた。彼女は勇気を振り絞って会社が用意した通報ホットラインに電話を掛け、つながった瞬間、恥ずかしい思いを家族に聞かれないように受話器を覆い、声を抑えてすべてを話した。しかし予想外だったのは、シャオホイさんが職場に復帰した後、同僚たちに冷遇され、意図的に距離を置かれた。それだけでなく、会社は機密保持契約書まで作成し、シャオホイさんに署名を求めたことだ(その目的は、不祥事が公表されるのを阻止するためだった)。結局、シャオホイは退職を余儀なくされた。
この会社は、主務官庁の期待に応じて通報制度を立ち上げたか。はい。
年次報告書のコーポレートガバナンスレポートにおいて「通報制度の運営状況」を記載しているか。多分あると思うが、あるとしても、いい加減と思う。
ある企業の通報統計をチェックした時、通報回数の合計がゼロになる年度があった。それは、この企業は優秀だから汚職した人がない、リベートをもらう人がないのか。それとも、通報するホットラインを敢えてかける人がいないのか。年次報告書の数字を分析するとき、別の観点から考えると、今までと違ったことを悟るかもしれないだろう。
■制度の設計に4大原則を守れば、社員が安心して通報できる
それでは、通報制度をどう設計すればよいか。本稿では次の4点をアドバイスする。一、企業は、社員が心理的に高度な安全感を持ち、恐れない職場環境と雰囲気を作り出す必要がある。その目的は、汚職を発見するとき、不当な扱いをされるとき(セクハラなど)、上位の人がお互いを庇うとか冷酷に振り回されることを心配するのではなく、勇気を出して電話をかける、又はメールを送ることができるのである。したがって、「上場・店頭公開企業信義誠実のある経営の手引き」第5条では、次のように言及している。「上場・店頭公開企業は清廉潔白、透明と責任のある経営理念に基づき、信義誠実を基礎とする戦略を策定しなければならない。」筆者のアドバイスは、信義誠実のある経営戦略を策定した以上、会社の経営陣は模範を示して率先しなければならない。それと同時に、教育訓練や社員会議を通じて信義誠実を守り不正を排除する決意を示す。方針を決めれば、後回しにしてはいけない。
二、通報者にはどのような報復(解雇、解任、降格、減給、又は法律、契約、慣習に基づく権利利益の侵害、又はその他の不利益な制裁など)を行わないことを企業は保証しなければならない。
三、通報者の身元及び通報内容につき、企業は秘密を保持しなければならず、漏えい、開示若しくはその身元が識別される情報を必要でない第三者に公開してはならない。
四、通報者の通報に対して、一定な期間内に対応しなければならない。
また、通報制度がコーポレートガバナンス、信義誠実のある経営にどれだけ良いとそればかり言うと、デマや恨みを抱き復讐するようなことにはどう対処すべきか。この問題は、「受け入れ原則」を確立することで回避できる。簡単に言えば、通報された人物、事柄、時間、場所、ものなどの内容が具体的でない、又は検証できる資料や方向を添付されていない場合、その受理を一時的に拒否することができる(ただし、参照用に保管する)。
コーポレートガバナンスと信義誠実のある経営は、言葉だけではなく、経営者が自ら模範を示すことで社員たちに会社の決意を実感させ、誠実に基づいた組織を構築する必要がある。
(この文章は「名家評論コラム」に掲載。https://www.ctee.com.tw/news/20240523700112-431305)