証券取引法の強制公開買付に関する規定、合憲認定

2023-05-01

2002年2月6日に改正・公布された証券取引法第43条の1第3項では、「誰かが単独もしくは他人と共同で取得する予定の公開発行会社の発行済み株式総額が一定な割合に達した場合、一定な条件に合致する状況を除き、公開買付けにより行わなければならない。」と規定されている。したがって、取得しようとする発行済み株

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2002年2月6日に改正・公布された証券取引法第43条の1第3項では、「誰かが単独もしくは他人と共同で取得する予定の公開発行会社の発行済み株式総額が一定な割合に達した場合、一定な条件に合致する状況を除き、公開買付けにより行わなければならない。」と規定されている。したがって、取得しようとする発行済み株式が一定な割合に達していれば、原則として公開買付けという方式で行うべきである。公開で買付けしなければ、証券取引法第175条に従い2年以下の有期懲役、禁錮もしくは新台湾ドル180万元以下の罰金を科する、又は併科することができる。

しかしながら、証券取引法第43条の1第3項でいう「一定な割合」とは一体どれくらいなのかについて、証券取引法では定められておらず、金融監督管理委員会に授権し、別途に関連規定を制定したのである。このような規範モデルは、いわゆる「空白刑法」である。証券取引法第43条の1第4項後半では、次のように規定している。「…前項の一定な割合及び条件について、主務官庁により定めるものとする。」よって、金融監督管理委員会は「公開発行会社の有価証券の公開買付に関する管理弁法」を制定しており、当該弁法第11条第1項において、「誰かが単独もしくは他人と共同で50日内に取得する予定の公開発行会社の発行済み株式総額が20%以上に達した場合、公開で買い付けらなければならない。」と規定している。

申立人は、上掲条項でいう「取得する予定」及び「50日内に取得する予定」という文言が刑罰の明確性の原則に違反し、証券取引法が特別刑法になるため、「一定な割合」、「一定な条件」等の構成要件を主務官庁に授権しこれを制定することは、明確性の原則に違反したと考えるため、憲法法廷に憲法解釈を申し立てたのである。

2023年4月28日、憲法法廷は112年憲判字第5号判決を下し、上掲条項が刑罰及び授権の明確性原則に違反しておらず、全て合憲であると認定した。その理由は、次のとおりである。

1. 証券取引法第43条の1第3項の処罰対象は株式を大量に買い付ける者であり、そういった人の資本市場における公開買付に対する専門知識と能力は、通常一般知識を持つ者より高い。

2. 「取得する予定」とは、文言の意味と目的に従って解釈すれば、買付される会社の株式を「事前に取得することを約定する」(即ち事前に取得することに合意する)と理解することができるので、「50日内に取得する予定」とは、「50日内に取得する予定に合意する」と理解することもできる。

3. 「一定な割合」とは、どのような状況において、買収される会社に対して重大な影響力又は実際の経営権を取得することを斟酌するので、主務官庁が国内の事情や現実の取引状況に従い、裁量する権限を持っており、「一定な割合」を「20%以上」と定めたことも、主務官庁の固有する権限範囲にある。株式を大量に買い付ける者は、その自身や専門チームが証券取引市場における専門知識のレベルをもって、上掲条項でいう「一定な割合」とは「20%以上」を含むことを予見することができるはずである。

4. 証券取引法第43条の1第3項がつくられた目的は、大量の買い付けにより有価証券の市場価格を影響することを避けるためである。同法第43条の1第4項は、証券市場の瞬時的な変化に対応し管理を直ちに調整できるため、当該一定な割合及び条件を主務官庁に授権し命令をもってこれを定めるものとしたのである。買付の量がどのような程度に達していれば、株式の市場価格に影響するかについて、証券市場という専門分野の主務官庁が最も詳しく、証券市場活動の複雑性及び専門レベルや市場変化に基づき、主務官庁には臨機応変に対応する必要がある。

5. 「一定な割合」や「一定な条件」とは、主務官庁に授権し公開買い付けの制限値幅と免除事由を制定させるので、授権の目的や内容、範囲は具体的で明確である。また、証券取引法の規定は、強制公開買い付けの規定を違反した場合の結果を予見でき、刑罰による制裁される可能性があるため、授権の明確性の原則に違反していない。