台湾のジーンズ老舗「如興社」の現金増資案をきっかけに、今年(2022)9月7日、証券取引所とタイペイエクスチェンジは上場・店頭公開企業に対し、13項の監査強化措置を行うことを公表した。取締役に注意していただきたいのは、「企業の『重大』事項につき、取締役にその役割の実践を要求すること」と、「取締役の役割を実践するため、書簡をもって取締役に通知し、『重大』取引や情報申告及びコーポレートガバナンス等を注意させること」である。
では、一体どのようなことが「重大」に該当するのか。どのような取引が「重大」取引に該当するか。
「重大」事項について、より明確な遵守基準として、〈上場・店頭公開企業コーポレートガバナンス実務守則〉第25条及び第35条、〈証券取引法〉第14条の3及び第14条の5を参考されたい。
それにしても、「重大」事項は多すぎるではないかと思われる。実は、これらの条項を詳しく分析すれば、4つの条項には、15項の状況も含まれている(即ち証券取引法第14条の5でいう11種類の状況と、コーポレートガバナンス実務守則第35条第1号の「会社運営計画」、第6号の「支配人の成果評価及び報酬基準」、第7号の「取締役の報酬構造と制度」、第9号の「関係者に対する寄付もしくは非関係者に対する重大な寄付」等である)。
それゆえ、こちで取締役に以下のアドバイスする:4つの条項が全て覚えられないと思えば、少なくとも証券取引法第14条の5だけを覚えていただきた。この条文は、監査委員会が職権行使に最も重要な条文であるからである。
また、「重大」取引とは、どういう取引か。これと同じように、証券取引法第14条の5第5号でいう「『重大』な資産もしくは金融派生商品取引」、及び第6号の「『重大』な資金貸与、裏書き又は保証提供」とは、どういう意味でしょうか。
これに対し、次のような証券実務の重大性に関する概念を参考していただきたい。この概念は、各ケースの状況や会社の総資産、払込資本金、株主権利、営業収入、税抜き利益等に対する影響を斟酌しながら、自社の株主もしくは証券価格に重大な影響をもたらすか否かを判断することである。これでも漠然とするかもしれないので、参考できる「量」を強いていえば、〈公開発行企業資産取得・処分の処理準則〉第9条から第11条でいう「払込資本額の20%」もしくは「新台湾ドル3億元以上」等の基準を参考されたい。
とはいえ、詐欺・汚職防止の側面から見ると、多くの犯罪者にとって、法律とか「量の基準」というのは、回避するしきい値に過ぎない。賢い犯罪者は、ある取引を「払込資本額の20%」や「新台湾ドル3億元」を超えないように設計するはずである。
したがって、犯罪を抑制するために、「重大性」を解釈する場合、「実質」を認定する基準に帰することは当然である。すなわち、上掲の「量」のしきい値に達していない場合でも、当該取引は株主や証券価格に重大な影響をもたらすか否か、又は一般的な理性な投資者の投資決定に対し、重要な影響を与えるか否かによるべきである。
なぜ主務官庁は、取締役に「重大事項」と「重大取引」を注意することを要求するか、という疑問を抱える取締役もいるかもしれない。簡単に言うと、前掲の関連条項、特に証券取引法第14条の5の各号で言う状況を詳しく見れば、これらの事項はある程度会社の資産を処分、又は変更することにつながるのが分かる。これらの事項は、詐欺・汚職に関する危険信号であり、そういう企業は危険な銘柄として理解してもよい。
会社の資産が移動、もしくは詐欺・汚職の信号があれば、全ての株主の権利を直接に影響するのは当然である。この時、年に一度しか取締役会に会うことができない株主たちにとって、取締役、特に独立取締役がしっかり利益を守ってくれることが必要である。
(この文章は「名家評論コラム」に掲載。https://view.ctee.com.tw/business/44746.html)