近頃、あるインフルエンサーによる貸店舗退去紛争が炎上したため、賃貸期間においてオーナーとテナントとの権利義務をどのように分ければよいか、そして契約満了日が過ぎてから双方はどのように円満解決するかは、再び話題になった。賃貸物件は大体居住用と商業用に分けられるが、2018年〈賃貸住宅市場発展及び管理条例〉が施行された後、内政部は今年3月に「住宅賃貸借定型化契約書テンプレート」及び「住宅賃貸借定型化契約記載すべき及び記載不可事項」を修正し、住宅の賃貸借、家主と入居者の権利義務、賃貸紛争の対処法などに対して明確に規範している。しかし営業用店舗や経営用オフィスとして使用する商業用賃貸借物件は、前掲規範に制限されず、民法と双方の約定内容に帰すべきである。
オフィスや店舗など商業用物件を賃貸借する時、通常注意すべき物件の状況、契約の開始日・終了日、賃料及び敷金の給付・返還、契約期間満了後に原状回復の要否等事項のほか、注意していただきたいことがまだいくつかある。
一、テナント(借主)について
1、契約を締結する前に、賃貸物件の土地使用区分と用途を確認しておくとよい。オーナーに賃貸物件の謄本等の関連資料を提供していただくほか、自ら「土地使用区分予備審査」を行い、建物第二類謄本を申請し、これから経営する予定の事業が賃貸物件の土地使用区分や使用用途に合致しているかどうかを確認し、違法な営業使用を事前に防止する。
2、実務上では、オフィスとしてビジネスセンターを賃借したが、貸主が物件の所有権者でないこと(いわゆる又貸し)はよくある。この時は、合法的に賃借し使用するために、物件の所有権者との間に転貸を同意した約定の有無を貸主に確認すべきである。
3、テナントは営利事業の責任者であるため、法に従い、納税義務者でもある。貸主が法人か自然人によって、〈所得税法〉、〈全民健康保険料控除及び補充保険料納付弁法〉等の関連規定に従い、テナントが貸主の代わりに営業税、所得税と補充保険料を控除すべきである。期限内に納付しなかった場合、所轄官庁は納税義務者(即ちテナント)に対し、過料及び滞納金を処することができる。そのため、賃貸契約を締結する時は、家賃に前掲税金及び補充保険料が含まれているか、インボイスを発行する必要あるか等を注意していただきたい。
4、賃借した物件が商業ビルにあれば、賃貸契約の約定のほか、対象ビルの公共施設の水道光熱費や空調設備の電気代の算出方法及び各ビルの管理弁法や規則も注意していただきたい。
二、オーナー(貸主)
1、家屋を商業用に貸借する時、テナントが定期的に家賃を納付しているかを注意するほか、テナントが対象物件において、双方が約定したとおりのビジネス行為を従事しているかも確認すべきである。実務上では、テナントが賃借した物件内に外国人を違法的に働かせることや、大陸地域の人民を違法に雇用し台湾にて無許可もしくは許可されている範囲と合致しない仕事を従事させることはよくある。<就業服務法>、<両岸人民関係条例>などに従えば、このような状況は貸主に過料を科させる可能性があるほか、刑事責任も負うことになる。したがって、契約を締結する前に、借主会社の基本資料(資本金額、営業項目を含む)及び住所移転の原因等を把握し、契約を締結する前に借主会社へ行き、借主の物件使用慣習を実際に確認しておくとよい。また、貸借した物件が不当・違法に利用されることを防止するために、賃貸契約において懲罰性違約金を取り入れることをアドバイスする。
2、借主会社の責任者を要求し、連帯保証人になっていただくとよい。借主会社に家賃滞納、悪性の倒産もしくはその他の損害賠償問題が生じたとき、その会社の責任者に直接に請求すれば、賃貸契約の履行は保障できる。
3、賃貸契約満了後に、借主が賃借した物件から退去しないことやその会社の商業登記を移転しない等の状況について、賃貸契約に次のように記載するとよい。「借主が約束した家賃もしくは違約金(懲罰性違約金を含む)を給付しない、又は期限満了日までに賃貸物件を明け渡さない場合は、強制執行を直接に行うものとする。」公証を受けた後、公証証書を作成すれば執行名義とすることができる。賃貸期間が満了した後、当該公証証書をもって借主会社の財産に対し、裁判所に直接に強制執行を申し立てる、又は賃貸物件の明け渡しを要求することができ、複雑な訴訟手続きを行わなくて済む。
この文章は「名家評論コラム」に掲載。https://www.ctee.com.tw/news/20231011700091-439901