一、改正背景
労働検査(日本労働基準監督署の立入調査「臨検監督」に相当)を強化し、それにより労働関係法令を確実に実行し、また労働検査の結果の透明化を図り、企業の違法状況を社会の人々に知らしめるため、《労働基準法》第80条の1及び《労働検査法》の条文の一部(以下それぞれ「労基法」と「労検法」という)は、今年2020年5月22日に改正、6月10日に公布、6月12日に施行された。
二、改正ポイント
(一) 労基法第80条の1
原条文には、労基法違反で主務官庁により過料を科された場合、主務官庁は事業所または事業主の名称、責任者の氏名を公表しなければならないとのみ定めている。これにより、実務上では国と地方自治体の主務官庁が開示する情報に不一致を招くほか、原条文により公表すべき情報は、企業が労働関係法令に違反した程度について、労働者と国民に知らせることができない。そのため、本条は労働者定年退職金条令第53条の1を参考にし、事業所や事業主の名称、責任者の氏名を公表するほか、「処分の期日」、「違反条項」及び「過料金額」をも公表することと改正した。
労働部(日本厚生労働省に相当)が立ち上げた「労働関係法令違反の事業所(使用者)検索システム」には、「公告期日」、「処分期日」、「処分番号」、「違反条項」及び「違反条項の内容」まで含まれている。改正前と後の違いは、2020年6月12日から処分されるケースでは「過料金額」も開示され、国民が検索できるようになる点である。
(二) 労検法第7条第3項
法により労働関連法令違反の事業所を公表するほか、労働検査機構(労働基準監督署に相当)の多くのプロジェクトの成果と一連の比較分析などの情報を社会の人々に知らせるため、労検法第7条第3項が新設された。当該年度に実施された労働条件及び安全衛生検査について、中央主務官庁は毎年定期的に労働検査年報に公表する内容である。
(三) 労検法第35条
労検員(労働基準監督官に相当)に労働検査を速やかに実行してもらい、それにより労働関連法令の執行の徹底を目指し、労検法第35条が改正された。事業所が労働検査員の検査職務を拒否、回避もしくは妨害することがった場合、処罰することができるという内容である。それにより労働検査が強化され、事業所の労働関連法令の遵守を促し、労働者の権益が守られる。
三、結論
今回の法改正をする前に、主務官庁は法令規定以外の関連情報を公表し、または事業所が労働検査を拒否、回避、もしくは妨害することがあった場合処罰していた。今回の改正をもって、労働検査の実務運営には更に明確な法的根拠が付加され、労働検査の強度を高められる。
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✽詳しい改正内容の説明は以下の通りである。
労基法
第80条の1第1項は、「本法に違反し、主務官庁により過料が科された場合、主務官庁は、その事業所または事業主の名称、責任者の氏名、処分期日、違反条項及び過料金額を公布し、かつ期限を定めて違法行為の改善を命じなければならない。また、期限を経過し改善しない者は、その都度処罰しなければならない。」に改正された。
労検法
第19条の検査の代行業務は非営利的な性質であることと一致させたため、第3条第2号:「公営事業機構が検査の代行機構に指定できる」という規定が削除された。
現行法令の名称と一致させたため、第4条第3号の「『労働者』安全衛生法令」を「『職業』安全衛生法令」に改正された。
第7条第3項:「中央主務官庁は、毎年定期的に労働検査年報を公表しなければならない。」が新設された。
原第33条第4項、第5項では「苦情を申出した労働者に対し、事業所は労働契約の中止やその他労働者に不利する行為をしてはならない(第4項)。労働検査機関は労働者の苦情を管理、秘密保持をしなければならない。苦情を申出した労働者の身分を漏えいしてはならない(第5項)。」とされていましたが、意味を明確にさせたため、原条の「労働者に不利する行為」を「労働者に不利する処分」に、「労働者の苦情を管理」を「労働者の苦情を受け」に改正された。
第35条は「事業所または行為者は、次の事情のいずれか一つに該当する場合、3万新台湾ドル以上15万新台湾ドル以下の過料を処し、その都度処罰することができる。一、第14条第1項規定に違反したとき。二、第15条第2項規定に違反したとき。」に改正された。