基本賃金から最低賃金、何が変わった?

2024-01-08

2023年12月12日、最低賃金法は立法院の第三読会にて可決され、同年月27日総統により公表されたが、施行期日はまだ未定である。最低賃金法と台湾現行の基本賃金制度の違いについて、次のとおり説明する。

作者

作者

2023年12月12日、最低賃金法は立法院の第三読会にて可決され、同年月27日総統により公表されたが、施行期日はまだ未定である。最低賃金法と台湾現行の基本賃金制度の違いについて、次のとおり説明する。

一、  国際的な用語に応える

「最低賃金(Minimum Wage)」とは、使用者が労働者に給付する賃金の最低の基準であり、この意味から見れば、「基本賃金」とあまり変わらない。今回用語の変更は、国際労働機関(International Labor Organization, ILO)が1970年に可決し、多くの国に採択された〈最低賃金決定条約〉を順守すると共に、国際労働機関の最低賃金制度という概念に合致するために、その立法説明にも「労働者及びその家庭の生活水準を向上させる」と記載している。

二、  規範のレベルアップ

現在台湾の基本賃金が労働基準法第21条第3項により制定された〈基本賃金審議弁法〉によって決められ、その性質は法規命令である。〈最低賃金法〉は立法院によって可決された法律であり、将来制度の見直しと働きは更なる監督と論議を受けるはずである。

三、  最低賃金審議会を立ち上げ、最低賃金の調整案を毎年定期的に審議する

最低賃金法第7条と第10条第1項により、労、使、学、政の代表計21名の委員からなる最低賃金審議会(以下「審議会」という)は、毎年第3季(七月から九月)に会議を開き、当年度の最低賃金の調整案を決めらなければならない。審議会の組み合わせ及び人数が基本賃金審議委員会のそれとあまり変わらないが、定期的に招集する要求は、将来最低賃金を毎年継続的に増額させる可能性はある。

四、  審議の参考指標を明らかに定める

基本賃金審議には参考指標を明らかに定めていないことに対し、最低賃金法第9条では、「消費者物価指数の前年比(CPI前年比)」を参考し調整幅を決めるものとしており、国民所得及び平均所得、最低生活費、労働者平均賃金の前年比等その他10の指標を参考することができる。

五、  決議と許可手続きを全うさせる

最低賃金法第10条第2項と第13条では、審議会の審議は過半数の委員が出席しなければならず、合意形成を原則とし、例外の状況のみ多数決で決めると規定している。その後審議の結果を行政院に報告し、許可を受ける。行政院が許可しない場合、審議会に差し戻し審議を再開し、行政院に再び報告して許可を受けらなければならない。決議の要件を増やすと共に、今まで行政院が許可しなかったため明確な処理方法のない泥沼状態を防止することができる。

六、  最低賃金研究委員会の立ち上げ

最低賃金法第12条では、次のように規定している。労働部は学者、専門家と政府部門をまたぎ、研究委員会を立ち上げ、審議会に参考させるために、最低賃金の実施が経済と就業に対する影響について毎年報告を提出すると共に、審議の参考資料につき研究報告及び調整アドバイスを提出しなければならない。基本賃金審議規則と比べれば、最低賃金法は審議会に協力する研究委員会に対し、より具体的な規範を有している。

結論

基本賃金制度から最低賃金法に変わり、一番大きい変更は「毎年定期的に審議と参考すべきな指標の確立」であろう。将来毎年の最低賃金がCPIの前年比につれて継続的に上がる可能性は予見できる。したがって、企業はこの傾向を給与政策と人事コストに取り入れて考慮する必要がある。しかしながら、使用者が最低賃金の責任違反及び労働者が最低賃金との差額を如何に請求するかについて、最低賃金法は現行の労働基準法とあまり変わらない。台湾政府が労働者の人権を保障しながら、国際労働機関のアドバイスを参考し、より厳しい使用者責任及びより迅速な最低賃金給付制度を増訂するかは、まだ観察する必要がある。