グローバル化による産業構造の変化や市場競争の激化などの課題に直面したとき、M&A(合併と買収)はよくみる企業戦略である。例えば、他社の株式の過半数を購入し経営権を取得し、事業の多角化や運営コストの軽減などの目標を達する。もっとも直接な買収方法は、公開市場で対象企業の株式を購入することである。株券公開発行会社にとって、その経営権の主人がいつでも変更されるリスクにさらされているため、「大量持株申告制度」が設けられており、金融監督管理委員会や企業経営者、株主が会社の株式変化をはっきり把握し、将来可能な経営権変動および株価変化に対応できるようにしている。よって、企業M&A法第27条第14項、15項(以下「係争規定」という)では、次のとおり定めている。「合併と買収を目的とし、本法規定により株券公開発行会社のいずれの発行済み株式総数の10%以上の株式を取得する場合、取得してから10日内に申告するものとする。申告事項に変動が生じる時、随時補正するものとする。前項規定を違反して公開発行会社の発行済み議決権付き株式を取
近時最高裁判所113年度台上字第1851号民事判決において、「M&Aの目的」に対する解釈がなされた。まず、企業M&A法第10条の立法理由を引用し、企業が「M&Aを行う目的の1つは、会社の経営権・支配権を取得することである」と示した。さらに、法人株主が会社の経営陣を交代させるために株式を購入するのは、「会社の経営権・支配権を取得する意図があり、企業M&A法における合併・買収の状況と合致している」ため、当該株主にM&Aの目的を有しており、係争規定を適用すると説明した。
しかしながら、上掲判決の下級審(注1)では、経営陣と意思疎通困難で会社の経営陣を交代させるために株式を購入する場合は、その後会社の経営権を取得しても、M&A目的に基づいた取得とは主観的に認定しがたいと判示した。また、企業のM&Aの多くは「組織を調整し、取引コストを削減し、効率的に企業を経営することを目的」としており、事業の内容が大きく異なる場合、M&Aをする動機があるかどうかは疑問である。過去の判例でも、「経営権の取得は、必ずしもM&Aに基づいた目的とは限らず、単なる投資に過ぎない可能性もある。」(注2)、「経営権をめぐる紛争はM&Aと違い、取締役の議席の獲得競争もM&Aの目的があると認めがたい。」(注3)と判示する。
以上をまとめると、M&Aの目的に関する判断について、いままでの判例では、株式を取得して会社の経営権・支配権を取得することは必ずしもM&Aの目的があるとは限らず、投資する可能性もあり、法人株主が会社の経営陣との意思疎通困難を解決し株主の権利を保護するために株式の過半数を取得するかもしれないと認めている。しかしながら、最高裁は、株式の取得が会社の経営権・支配権を取得するためである場合、M&Aの要件を満たし、M&Aの目的を有すると解釈できると判断した。これは過去の見解と異なり、注意しなければならない。
參考資料
注1:知的財産および商業裁判所112年度商訴字第37号民事判決
注2:台湾高等裁判所110年度上字第309号民事判決
注3:台湾台北地方裁判所109年度訴字第4498号民事判決