財務報告の申告不実罪「重大性」要件の判断基準について

2018-09-17

台湾の証券取引法(中国語:證券交易法)第20条第2項、第171条1項第1号の財務報告申告不実罪について、同法第20条之1の規定や目的性解釈、体系解釈および比較法の観点に照らし、現在学界および司法実務上はいずれも「重大性」を具えている場合に限るとされている。すなわち関連情報の主たる内容あるいは重大事項

作者

作者

No items found.

台湾の証券取引法(中国語:證券交易法)第20条第2項、第171条1項第1号の財務報告申告不実罪について、同法第20条之1の規定や目的性解釈、体系解釈および比較法の観点に照らし、現在学界および司法実務上はいずれも「重大性」を具えている場合に限るとされている。すなわち関連情報の主たる内容あるいは重大事項に虚偽あるいは隠匿があって、理性ある投資者に損害を与えるに足るような場合にのみ、財務報告申告不実罪に該当する。さもなければ同法第178条1項第4号の行政責任と区分ができなくなり、また上記罪名の規範目的および刑法の謙抑主義とも矛盾する。ただ「重大性」要件の判断について、現行の証券取引法も最高裁判所もいずれも明確な判断基準を示していない。最高裁判所はかつて106年度台上字第278号刑事判決(2017年)において、原審判決に対し、財務報告の虚偽あるいは隠匿の「内容」に関し、「重大性」という判断基準をもって判断する理由、及び判断の基準となる「量の指標」「質の指標」の解釈について、いずれも判決理由において論理の根拠を説明しておらず、判決理由の不備であると指摘した。ただし、関連する法律適用の疑義については未解決のままである。この争議問題を根本的に解決するために、多くの学者が法改正の必要性を論じ、、条文中に「重大性」の要件を加えるよう提案している。

しかし最近最高裁判所の107年度台上字第606号刑事判決(2018年)においては、財務報告申告不実罪は「重大性」を具えている場合に限るとし、参考となる判断基準を次のように明確に示した。

「いわゆる『重大性』とは、その情報全体が一般の理性ある投資者の投資判断に影響を与えうるかどうかによる。判断基準について法的に明文化されていないが、関連する学説や外国の立法例を参考にすれば、いわゆる『量の指標』および『質の指標』をもって区分の根拠とできよう。ここにいう『量の指標』とは、会社の純利益に対する影響が特定基準以下を指し(米国証券管理委員会が1999年に公布した〈第九九号幕僚会計公告〉より5%という基準が定められた)、台湾では、『量の指標』を判断する際に参考となすべき根拠として、証券取引法施行細則第6条1項の財務報告のやり直しの規定、『会計監査準則公報第51号—監査計画および執行の重大性』、あるいは証券発行者財務報告作成準則といった規定がある。また、『質の指標』とは、理性ある投資者にとって当該虚偽あるいは隠匿された情報は重要内容であり、その投資決定を変更させるに足るような場合をいう。事実審裁判所が、財務報告の申告不実が『重大性』要件の該当性を判断する場合、その認定基準あるいは根拠が何かを説明しなければならない」

この判断は、学者の見解および外国の立法例の趨勢と一致しており、とても参考になる。一方、ケースごとにどう「質の指標」と「量の指標」を適用させるか、両者の適用関係はどう説明されるか、将来の裁判実務より充実されることが期待される。