憲法訴訟法の施行

2021-01-10

立法院第三読会にて可決され、2019年1月4日、総統により公布された憲法訴訟法は、3年後に施行されることが明文で定められているため、近時正式的に施行し始めた。憲法訴訟法が制定された目的は、憲法審査制度による国民の基本権利を保障する目標を着実に実践し、司法権の一環とする憲法解釈権が機能することを促すも

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立法院第三読会にて可決され、2019年1月4日、総統により公布された憲法訴訟法は、3年後に施行されることが明文で定められているため、近時正式的に施行し始めた。憲法訴訟法が制定された目的は、憲法審査制度による国民の基本権利を保障する目標を着実に実践し、司法権の一環とする憲法解釈権が機能することを促すものである。そのため、今後大法官は会議をもって解釈することではなく、憲法法廷の名義で憲法訴訟案件を審理することになる。

 憲法訴訟制度は、前の大法官会議と比べ、下記の特色がある。

一、 国民が終局裁判所までの手続に基づき救済しても不利の確定の判決を受けた場合、直接に大法官へ当該裁判の違憲審査を申立てることができる。これから、間接的に大法官解釈を通して原裁判の法適用の違憲を宣告し、原裁判の裁判所に再審救済を提起しなくてもよい(憲法訴訟法第59条)。

二、 憲法法廷が判決を下す条件は、「大法官総数の3分の2以上が評議に参加し、大法官の総数の過半数が同意する。」のように改正され、すなわち、8名の大法官が同意すれば、違憲あるいは合憲の判決を下すことができる。旧制度では、10名以上大法官の同意がなければ、大法官解釈を下すことができなかった(憲法訴訟法第30条)。

三、 国民が憲法訴訟案件を申立てる際に、訴訟代理人を委任することは必要ではない。ただし、個別の案件の性質により、大法官が審理中に口頭弁論手続を行うことを決定する場合、当事者は、弁護士もしくは法律の専門家を訴訟代理人に選任する必要がある(憲法訴訟法第8条、第25条)。

四、 違憲審査案件は高度な専門性を有しており、また政治や経済、人文等の分野にかかわっているので、国外立法例の「法廷の友の制度」(Amicus Curiae)が導入されている。そのため、憲法法廷に参考するため、当事者以外の国民、機関もしくは団体は、能動的に申立て許可されたうえ、参考価値のある専門的な意見・資料を提出することができる(憲法訴訟法第19条、第20条)。

五、 その他、国民に対し有利な手続の改正:
(1) 電子化サービスを新設する。すなわち、紙の書面を提出するほか、同じ効力をもっている電子書面を送付することができる(憲法訴訟法第14条第5、6項)。
(2) 資料閲覧謄写制度を導入する。すなわち、普通の訴訟案件のように、当事者、訴訟代理人及び弁護人が審査案件の書類の閲覧、謄写、コピー、又は撮影することができる(憲法訴訟法第23条)。
(3) 当事者の利益を保護するため、審理手続が終結していない案件は、新しい制度に従い、憲法法廷の裁判により終結する(憲法訴訟法第90条)。
 
これから、長年にわたり813号の解釈を作成した大法官会議は、歴史に残るものとなる。今後、実務における憲法訴訟制度の運営状況と成果は、憲法法廷を通し個別の裁判により現れるが、普通の司法審判に近い憲法訴訟方式により、終局裁判の違憲性を審査することは、国民の救済を求める意向を向上させ、国民の基本権利を保障する立法目的につながることを期待できる。