外国企業の台湾投資における会社設立の形式について ―「営業行為」の定義を中心に―

2019-03-13

外国企業が台湾で会社を設立する場合、「どのような形で設立するのか」ということを最初に決めなければならない。この場合、まずは外国企業が台湾で従事しようとする行為が、台湾会社法第371条第1項、第386条第1項に規定する「業務の経営」又は「営業」の行為に属するかを判断する必要がある。仮にこれらに属するな

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蔡孟芩

外国企業が台湾で会社を設立する場合、「どのような形で設立するのか」ということを最初に決めなければならない。この場合、まずは外国企業が台湾で従事しようとする行為が、台湾会社法第371条第1項、第386条第1項に規定する「業務の経営」又は「営業」の行為に属するかを判断する必要がある。仮にこれらに属するなら、外国企業が支社又は子会社の設立を行わなければならない。一方、営業行為がなければ、主務官庁に駐在員事務所の設立登記を行うというより簡便な形式をとることができる。

駐在員事務所設立の手続きは、会社設立よりはるかに簡単であるので、「営業行為」の定義を明確にする必要がある。台湾経済部2003年10月29日経商字第09202221350号通達によれば、営業行為とは、「会社が従事する経常性、反覆性を有する商業活動」とされている。逆に言えば、営業行為に属さず、駐在員事務所により行われる業務上の法律行為とは、契約締結、入札、価格見積、調達および価格交渉といった行為を指すことになる。

今まで裁判所が上記解釈の実践にあたり、ケースバイケースで対応するので、判断基準適用の厳格さの違いにより異なる結果が出ている。台湾台中地方裁判所2011年度易字第3896号刑事判決はその一例である。当該案件の被告らは台湾に駐在員事務所を設置してから、外国企業の名義で木材を購入し、貨物の引渡しをもアレンジしたりしていた。裁判所より経済部に問いかけた結果、経済部はこの取引が調達にあたり、営業行為に属さないと認定した。よって被告らが駐在員事務所を設立し従事した行為は会社法の規定に違反していなく無罪とした。

一方、厳格に認定する見解も見られる。台湾高等裁判所2003年度上易字第2525号刑事判決はその一例である。本件で被告らは映像会社に代わって台湾で駐在員事務所を設立し、5名以上の従業員を雇用していた。そして台湾の会社と映像授権にかかわる契約を交わし、香港の口座を通じて授権金を受け取った。この「授権契約締結」の行為について、裁判所は当該駐在員事務所が届出た変更事項登記表の内容:「代表者が中華民国領域内で行う法律行為:本社を代表し商標出願を行い、商標法・著作権授権の違反と取締りにかかわる処理。弁護士に委任して告訴、提訴、民事訴訟、行政訴訟および和解などの行為を行うことが含まれる」に属しないと認定した。よって、この「包括」部分に列記された事項に当てはまらないと判断され、たので、被告らは駐在員事務所を設立しただけで営業行為を行ったとして、会社法違反の有罪判決が下された。

このように「営業行為」の解釈は不確定法概念に係るので、法律違反を避けるために、外国企業が台湾で会社を設立する前に、その拠点の業務の中身をはっきり確認したうえで、支社あるいは子会社を設立するか、又は事務所を設立するかを決定する必要がある。