労働者法定休暇権と防疫措置との調和(2)

2020-04-27

社員が有給休暇を取って、コロナウィルスの感染状況が厳しい国に旅行し、帰国後、当該社員及びその同僚は、それぞれ、旅行歴や濃厚接触などの理由とされ、隔離が要求されたので、会社は一時、運営不能になってしまう事例がある。そこで、会社は、社員の有給休暇を管理、制限できるかという問題が生じる。

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社員が有給休暇を取って、コロナウィルスの感染状況が厳しい国に旅行し、帰国後、当該社員及びその同僚は、それぞれ、旅行歴や濃厚接触などの理由とされ、隔離が要求されたので、会社は一時、運営不能になってしまう事例がある。そこで、会社は、社員の有給休暇を管理、制限できるかという問題が生じる。

2016年12月21日改正の労働基準法第38条第2項によれば、有給休暇の「指定権」は社員に付与されている。ただし、感染拡大の防止等原因で必要があると認める場合、労使双方は、協議の上有給休暇の日時を調整することについて、労働基準法に違反していない。

また、「有給休暇自由利用原則」によれば、原則としては、使用者は労働者の休暇、私的生活を干渉してはならないので、労働者は、有給休暇の使途をについて、使用者に具申する必要がない。たとえ具申した使途と実際の使途が一致していないとしても、有給休暇の権利に影響がない。

しかし、日本の裁判例には、会社の就業規則では明確に休暇届の書式が規定されており、休暇事由の記載が要求されるものの、労働者は、虚偽の理由を記載した場合、使用者は、休暇届記載不実、「勤務に関する所定の手続きを怠ったこと」に該当したとして、懲戒を行うことができるとした(1980年2月18日東京高等裁判所「古河鉱業事件」判決)。

法令根拠が異なるので、台湾において、そのまま日本の裁判例を引用することは難しい。しかし、労使関係は、労働者個人の人格上の権利を保障するほか、企業全体、組織上の利益も保護することとなる。使用者は、事前に就業規則で、労働者に、感染病防止対策期間において、有給休暇の旅行先を具申する義務、休暇の期日の調整、感染厳重地域への旅行禁止等を明記することは、法的には、容認されるのではないかと思われる。