一、前書き
近年、台湾の金融監督委員会は、国民に、他人名義口座の提供を有効的に防止しように呼びかけ、金融犯罪を途絶させるよう、繰り返して呼びかける。そのため、他人名義口座の提供がマネーロンダリング罪に該当するかどうか、最近、注目を集める議題となっている。
二、従来の実務において、多数の見解は、他人名義口座の提供がマネーロンダリング罪に該当しないとしている。
(一)マネーロンダリング罪について、資金洗浄防止法第2条では、三つの事由が規定されている。
1. 意図的に特定犯罪による所得の取得先を隠蔽又は隠匿したり、又は他人の訴追を免れさせたりするため、特定犯罪の所得を移転又は変更させること。
2. 特定犯罪所得の本質、入手先、流れ、所在、所有権、処分権とその他の権益を意図的に隠蔽又は隠匿すること。
3. 他人から特定犯罪の所得を受け取ったり、所有したり、利用したりすること。
(二)詐欺行為はマネーロンダリング防制法上にいう特定犯罪の一つであるので、その所得を他人名義口座に移転させることはマネーロンダリング行為に該当する可能性がある。
詐欺団体が被害者に詐欺行為を行い、被害者の財産を詐取することは、刑法第339条の詐欺罪に該当している。詐欺罪は、資金洗浄防止法に規定されている特定犯罪であるので、詐欺集団が詐取した所得の費用を他人名義口座に移転することは、マネーロンダリング行為に該当する可能性がある。
(三)従来の実務において、多数の見解は、他人名義口座の提供がマネーロンダリング罪に該当しないとしている。その理由は以下の通りである。
1. 客観構成要件について、マネーロンダリング罪の要件には、前後の順番がある。即ち、まずは、重大な犯罪による所得があり、その後、資金の移転行為があった場合、初めてマネーロンダリングに該当している 。ただし、他人名義口座の提供は、通常、詐欺団体が被害者を騙した前に発生した行為であるので、マネーロンダリング罪の要件に合致していない。
2. 主観的構成要件について、行為者は、移転された資金(不法の所得)が「特定犯罪」によるものであると認識しなければならず、また積極的に特定犯罪による所得を隠蔽、隠匿するという客観的行為を行ったこととされている 。しかしながら、詐欺団体は、多くの場合、口座提供者に犯罪目的を告知せず、また、口座提供者も自己の口座が犯罪に利用されることを認識していないので、この主観的構成要件にも合致していない。
三、結論
簡単に言えば、現在、実務における多数の見解は、口座提供行為が現行の資金洗浄防止法に規制されているマネーロンダリング罪の要件に合致していないので、マネーロンダリング罪に該当していないという見解を示している。しかしながら、今後、裁判所の見解が変更されるかどうかについては、注目すべきである。