世界中の何処でも、「性別の差異は、差別になるか」は、いつも重要で敏感なテーマである。ここ数十年来、世界各国における主流の思考傾向は、参政権から職業の自由まで、各方面ですべて男女平等の方向へ発展し、できるだけ性差別をなくし、性別による偏見から生じる不公平な待遇を途絶させることに努力してきた。
こうした中で、今までの台湾では、女性が男性との違いを理由として、深夜(22時~6時)勤務が「人身安全を害するおそれ」かつ「健康に不利」な状況があり、特別な保護を与える必要があるので、女性の深夜勤務は原則的に禁止されていた。その例外として、労働組合もしくは労使会議に同意してから、使用者が必要で安全衛生施設を提供し、公共交通機関が利用できないときに別の交通機関もしくは睡眠をとれる施設を提供したうえ、女性労働者に夜勤を手配することができる。これは、女性の深夜における働く権利を保障するためであり、原労働基準法第49条第1項規定を参照されたい。
「使用者は、女性労働者を午後10時から午前6時までの時間帯に働かせてはならない。ただし、労働組合が同意、又は事業所に労働組合のない場合は労使会議が同意してから、次のような各規定に合致する場合、この限りではない。一、必要な安全衛生施設を提供する。二、公共交通機関が利用できない場合、交通機関もしくは睡眠をとれる施設を提供する。」
しかしながら、労働市場において、女性労働者が深夜労働を同意しても、労働組合もしくは労使会議に同意されていないので、使用者が主務官庁に処罰されたことがよくある(労働基準法では、その違反する行為に対し、過料等を科する規定が置かれている)。そのため、処罰された数多くの使用者が憲法解釈を申立てた後、司法院大法官は2021年8月20日に〈大法官釈字第807号解釈〉を下した。その解釈では、労働基準法第49条第1項規定は、「性別に対する偏見により、女性労働者の深夜における働く権利を不当に制限し、女性労働者への差別を形成した。」とし、明らかに憲法で保障する「男女平等」に違反したため、直ちに無効になると示された。
この条項が無効となる場合、使用者が女性労働者に同意してから、直接に夜勤を手配する時、労働組合や労使会議に同意を受ける必要はないものの、労働者が夜勤のとき人身安全を懸念する、もしくは健康状態が夜勤をできない場合、今後使用者は労働者の深夜労働シフトを如何にすれば関連法規に合致するかの懸念が生じる。
この点について、労働部は若干の説明を付け加えた。1、大法官釈字第807号解釈に従い、実務と学者の意見を集め、法改正を推進する。労働分野の男女平等原則に基づき、労働者の深夜労働の保障を守り続ける(即ち「深夜労働の安全保護措置」、「公共交通機関がないとき適切な交通機関若しくは睡眠をとれる施設」等を提供すること)。2、労働基準法第49条第3項、第5項規定の「健康等正当な理由のある女性労働者を深夜に働かせてはならない」及び「妊産婦の女性労働者の深夜労働を禁止する」等、当該解釈に影響されない。
労働部が大法官釈字第807号解釈に対する意見から、次のようなことが分かる。
労働基準法が改正される前に、使用者は、妊産婦の女性労働者を夜勤にさせることを避けた方がいい。女性労働者を夜勤させる必要がある場合、女性労働者の同意を確実に取得するほか、その健康状態は耐えられるかを注意し、適切に休ませ、女性労働者を無理やりに夜勤させてはならない。
また、使用者は労働者に夜勤を手配する、現在の法令では、労働者に夜勤の安全保護措置を提供、又は公共交通機関が利用できないとき適切な交通機関もしくは睡眠をとれる施設を提供することを要求していないが、労働分野の男女平等原則及び労働者の深夜労働を保障する趣旨に基づき、夜勤する労働者の人身安全を適切に保障し、労働者の健康状態を注意しなければならない。
これによって、使用者が労働者の安全と健康を守る決心を具体的に示すだけでなく、労働者の使用者に対する良性の信頼関係を強化することができ、労使双方も共に努力し、各産業をさらに発展させていく。