2018年11月9日に台湾の立法院は労働事件法を制定し、12月5日に公布した。当該法律は2019年年末に施行される予定である。その中に、第37条の「賃金の推定」及び第38条の「労働時間の推定」では立証責任に関する特別規定が盛り込まれており、労働者に対し労働訴訟の立証が有利になり、その一方、訴訟において、企業(即ち使用者又は雇い主)の立証負担を加重した。そのゆえ、訴訟上の不利益を最小限に軽減するために、企業は、事前に就業規則及び関連資料の管理を強化しなければならない。
労働事件法第37条では、「労働者と使用者が賃金に関する争いについて、労働者が労働関係に基づき使用者から受けた支払いと証明された場合、それが労働者の労働によって受ける報酬と推定される。」と規定されている。従って、労働訴訟において、労働者が「受けた報酬は労働関係により使用者から支払った」という事実を主張した場合、受領した報酬が労働者の労働によって受ける報酬と推定されることとなる。しかしながら、使用者が支払った賃金については、すべて労働の対価であるかどうかは疑問が残されている。当該条文の推定効果のもとで、使用者は、労働者が受領した報酬のうちに、どの部分が労働によって受ける報酬ではないことを証明しなければならない。そのため、企業が労働者にいかなる賃金を支払った場合、支給項目及び金額の計算方法を明確に記載し、また就業規則でに各支給の請求方法及び支払い方法を規定しなければならない。それにより、将来の訴訟において、企業は、当該金額の支給が「労務対価性」又は「経常的支給」に該当していないこと立証することはより簡単になろうと思われる。
労働事件法第38条はでは、「出勤記録に記載される労働者の出勤時間は、労働者が当該時間に使用者の同意を得て、職務を執行すると推定される」と規定されている。従って、労働訴訟において、労働者が出勤記録を示した場合、当該記録に記載された出勤時間が正常労働時間を超えた場合、使用者に労働基準法第24条に従い残業代を請求することができる。言い換えれば、本条に従い、労働者が「当該時間に、使用者の同意を得たうえ、職務を執行した」と推定されることとなる。しかしながら、労働者が当該時間に使用者の同意を得て、職務を執行したかどうかはまだ疑問が残されている。当該時間には、休憩時間が含まれるか、また、労働者が使用者の同意を得なかったものので残業した可能性もある。それに対し、使用者は、労働契約、就業規則又は他の管理資料を提出し、それを反論の証拠として、上記の推定を覆すことができる。以上のように、企業は、労働契約又は修就業規則を改正し、非出勤時間及び残業手続を明確に規定し、また、関連出勤記録や日記に詳しく記載し、その管理を強化しなければならない。それにより、将来の労働訴訟において、企業は、本条の推定効果を覆すことが簡単になろうと思われれる。