一、 前書き
労働事件法(以下本法という)は2018年12月5日に公布され、まもなく2020年1月1日に施行する予定である。本法は民事訴訟法の特別法として、また労働事件も民事訴訟の大部分を占めるので、本法施行後には係属中の労働事件に影響をもたらすと考えられる。そのゆえ、本法が施行される前に係属した労働事件は、施行後にどう扱うべきかが明確を期するため、近日司法院民事庁は本法第52条の授権により、労働事件法の施行細則草案(以下本細則という)を作成することを予告した。企業はこれに対し留意すべきである。
二、 労働事件法施行細則草案ポイント
以下の通り本細則草案のポイントを簡単に説明する。
(一) 本法施行する前に普通裁判所にすでに係属し、まだ終了していない労働事件(本細則第2条)
1. その進行程度に従い、本法が定めた手順で終了させる。本法第16条第2項規定を適用しない(本細則第2条第1項の1)。
草案説明では:「手続きの安定並びに当事者の手続き利益のため、本法施行する前にすでに係属している労働事件は、原則的に本来の裁判所が本法規定に従い、終了させるべきである。本法第16条第2項の先行調停を適用しない。」
2. 係属した時の法律もしくは本法第6条第1項に従い、管轄する裁判所を決定する。労働者は本法第6条第2項、第7条に基づき移送を申立てるのは、口頭弁論の前に行うべきである(本細則第2条第1項の2)。
草案説明では:「裁判所の管轄につき、係属した時の法律もしくは本法第6条第1項により定めるべきである。」
3. 裁判費用の徴収は、起訴、申立、上訴もしくは抗告する時の法律により定められる(本細則第2条第1項の3)。
草案説明では:「本法の裁判費用徴収についての減免仕組みは、第1項事件につき、手続きの安定を維持するため、本法が施行される後に起訴、申立、上訴もしくは抗告する事件に限られる。
4. 前項の事件は、本法施行後に終了し、上訴もしくは抗告する事件、本法を適用する。
(二) 本法施行する前に、すでに知的財産裁判所に係属し、まだ終了していない労働事件(本細則第3条)
1. 本法施行する前に、すでに知的財産裁判所に係属し、まだ終了していない労働事件は、本法が施行された後、その進展程度に従い、労働事件審理細則第4条第4項が定めた手続きで終了させる(本細則第3条第1項)。
草案説明では:「知的財産裁判所は知的財産権に関した労働事件に対し、管轄権も有している。裁判所の専門性質のため、本法施行する前にすでに知的財産裁判所に係属しまだ終了していない事件は、労働事件審理細則第4条第4項が定めた手続きで終了させるべきであるため、第1項の規定を定めた。」
2. 前項の状況は、前条第1項の2、3の規定を適用する(本細則第3条第2項)。
草案説明では:「前条第1項の2、3の規定の管轄及び裁判費用に関する規定は、第1項事件にも適用する。」
(三) 本法施行する前に、すでに上級審裁判所に係属し、まだ終了していない労働事件(本細則第4條)
1. 本法が施行する前に、すでに上級審裁判所に係属し、まだ終了していない労働事件につき、本法が施行された後に破棄差戻や破棄移送の事件は、労働専門法廷もしくは専門担当部(以下労働法廷という)が処理することになる。ただし、知的財産裁判所に破棄差戻や破棄移送すべきの事件はこの限りではない(本細則第4条)。
2. 草案説明では:「本法施行する前に、上級審裁判所に係属し、まだ終了していない労働事件につき、本法が施行された後に破棄差戻や破棄移送の者は、破棄差戻や破棄移送を受けた裁判所の労働法廷に本法規定を適用し扱われるべきである。ただし、知的財産裁判所に破棄差戻や破棄移送すべきの事件は、当該裁判所に労働法廷が設置されていないため、この限りではないので、本条を設け争議を防ぐ。」
(四) 本法施行する前に、すでに調停を申立てるもしくは調停申立に見なす労働事件につき、その調停手続きはまだ終了していない労働事件(本細則第5条)
1. 本法施行する前に、すでに調停を申立てるもしくは調停申立に見なす労働事件は、本法施行後にも民事訴訟法が定めた調停手続きに従い処理すべきである(本細則第5条第1項)。
草案説明では:「本法施行する前に、すでに調停を申立てるもしくは調停申立に見なす労働事件につき、その調停手続きがまだ終了していない事件は、施行された後にも民事訴訟法が定めた調停手続きに従い処理すべきである。」
2. 前項の調停が成立しなく、当事者が民事訴訟法第419条第1項に従い、訴訟の弁論を申立てる場合、ただちに案件を配分し、労働法廷が個別の状況により適切に処理すべきである。同条第2項、第3項に従い、調停申立時から起訴と見なすもの、また同条第4項に従い原起訴からもしくは納付命令を申立てる時に訴訟係属の効力が発生するものは、本法第16条第1項規定を適用しない(本細則第5条第2項)。
草案説明では:「案件を配分された後、労働法廷は個別の状況により適切に処理すべきである。弁論できる段階になったと認定すれば、法に従いただちに訴訟の弁論をなすべきである。もし訴訟の準備はまだ不足と認定すれば、直接弁論をしなく、弁論の準備をしなければならない。また前出の調停が不成立の労働事件は、もしも民事訴訟法に従い申立時から起訴と見なすなら、もしくは訴訟係属の効力が発生するものは、本法施行する前にすでに裁判所に係属したため、本細則第16条第1項規定に従い、労働調停手続きを行う必要はない。したがって、本法第16条第1項規定を適用し、裁判所を通し労働調停手続きを行う必要がなくなる。」
(五) 本法施行する前にすでに係属した労働事件につき、民事訴訟法に従い付調停に移送し、その調停手続きはまだ終了していない労働事件(本細則第6条)
1. 本法施行する前にすでに係属した労働事件につき、民事訴訟法に従い調停に移送し、その調停手続きはまだ終了していない事件は、民事訴訟法の調停手続きに従い行う。施行後に調停になるものも同じである。
草案説明では:「本法施行前に、民事訴訟法第420条の1に従い調停に移送し、まだ終了していない労働事件、もしくは施行後に調停に移送した事件は、民事訴訟法に規程されている調停手続きに従うべきである。」
三、 結論
以上で、本細則の作成は本法が施行する前にすでに各級、各種類の裁判所に係属した労働事件に対し、本法が施行された後にどう扱うべきかの原則的な規範を定め、裁判所が本法を適用する時に生じる矛盾をある程度解決できる。注目すべきなのは、本細則はまだ草案の段階であり、証拠保全に関する規定は詳しく言及していないため、将来本細則の作成を留意すべきである。
参考資料:
司法院〈労働事件法施行細則〉作成を予告
http://jirs.judicial.gov.tw/GNNWS/NNWSS002.asp?id=532512&flag=1®i=1&key=&MuchInfo=&courtid=
(最後にブラウジングした日:2019年12月9日)