台湾実務における域外作成司法警察員面前調書の証拠能力の新たな動向

2020-10-20

「国境をまたぐ刑事事件」における証人の域外での警察機関によって調査された供述内容は、事件の進展や被告人の有罪・無罪を左右する。今まで台湾の裁判所は域外で作成された司法警察員面前調書を「伝聞証拠」と認定し、その証拠能力があるかどうかについては、これまで見解が相当分かれている。

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李昕陽

「国境をまたぐ刑事事件」における証人の域外での警察機関によって調査された供述内容は、事件の進展や被告人の有罪・無罪を左右する。今まで台湾の裁判所は域外で作成された司法警察員面前調書を「伝聞証拠」と認定し、その証拠能力があるかどうかについては、これまで見解が相当分かれている。

 当外国の政治や経済状況は軌道に乗っているか否かを観察しながら、調書が作成されたプロセス及びその外部環境を勘案した上、証言の信ぴょう性が認定された場合、当外国警察機関が作成した調書は台湾の刑事訴訟法第159条の4第3号の包括的条項に規定された「特信文書」と認定されるため、直接当該規定に従い、証拠能力を有するという判決がある(最高裁100年度台上字第4813号判決趣旨を参照)。同じ理由に基づき、第159条の4第3号の規定を類推適用すべきであり、証拠能力を有するという判決があり(最高裁101年度台上字第900号判決趣旨を参照)、外国の警察機関のシステム・働きは台湾と同じであり、法秩序において同一規範と見なすべきであるため、このような域外で作成された司法警察員面前調書は刑事訴訟法第159条の2又は第159条の3の規定を類推適用すべきとし、証拠能力を有するとという判決もある(最高裁96年度台上字第5388号判決趣旨を参照)。

 一方、各国の法律システムと実務運用は食い違う点があることを認めた判決もある。それにもかかわらず、被告人の防御権は法律でなければ制限できないという点からみれば、台湾法における伝聞例外の規定を類推適用し証拠能力を有することを裁判所が許容する場合、伝聞法則の例外規定を不当に拡張し、被告人の対質・尋問権を侵害するおそれがある。これは、明らかに法律の留保という原則に違反する。よって、国は被告人の対質・尋問権を保障すべくあらゆる方法を尽くした場合に限り、このような域外で作成された司法警察員面前調書は、原則としてその証拠能力を有しないと認定しなければならない(最高裁104年度台上字第2479号判決趣旨を参照)。

 上記のように、真実の発見と被告人の人権保障という二つの目的の間に、裁判所の見解のブレが現れている。これは被告人及び弁護人ともに、メリットがない。幸い、最高裁は107年度(2018年)第1次刑事法廷会議決議において、この問題に対する見解を統一させた。2年たった現在、このような域外で作成された司法警察員面前調書の証拠能力について、最高裁見解の統一性が示されている。例えば近時最高裁109年(2020年)度台上字第3257号判決では、以下のことを示した。「域外で作成された司法警察員面前調書は性質上、我が国の司法警察員面前調書と類似しているため、同じく伝聞証拠に属する。そのため、法秩序において同一規範は同じように処理すべき法理に基づき、類似規定を引用すべきである。被告人の尋問権が保護されたことを前提として、刑事訴訟法第159条の2及び第159条の3の規定を類推適用し、証拠能力を有すると認定することができる。」

域外で作成された司法警察員面前調書が伝聞例外規定を類推適用できる場合は以下二つに限られる。

1、 証人が出廷できない理由は、国家機関の事由に責を帰すことができないものに限る。また裁判所は、あらゆる方法を尽くし被告人の対質・尋問権を保護し(例えば刑事訴訟法第177条第2項、第3項の「遠距離テレビ電話」などの方式を使用する。)、それができない場合、初めて伝聞例外規定を適用できる。

2、 域外で作成された司法警察員面前調書の内容は「絶対的な信ぴょう性」及び「必要性」を有することを厳密に審査する。

 また、注意に値することは、案件がかかわった外国と台湾の間に司法共助協定が存在する場合の、最高裁が「遠距離テレビ電話」方式を優先的に採用し、証人と被告人とに対質・尋問させることを非常に強調しているという点である(最高裁108年度台上字第2034号判決趣旨を参照)。