一、事件事実
原告は、台湾において登録済みの商標「老天禄」(以下異議商標という)の商標権者である。被告は、原告の同意なしに原告の店から60メートルもならない距離で「上海老天禄」(以下係争商標という)という商標を使用し、滷味(ルーウェイ)を販売し、各オンラインショップ、実店舗の看板で係争商標を使うと同時に、「上海老天禄二代目のオリジナルブランド」、「上海老天禄二代目の店」等文言を使ったため、原告から訴訟を提起し、侵害排除及び停止を請求した。
二、本件の争点
(一)被告の行為は、商標の「使用」になるのか
(二)被告の行為は、異議商標の商標権を侵害したのか。
(三)被告は、商標権の合理的使用を主張できるのか。
三、裁判所の判決
(一)被告の「上海老天禄二代目のオリジナルブランド」、「上海老天禄二代目の店」等文言を使用することが商標を使用することになる理由は、以下の通り:「上海老天禄二代目のオリジナルブランド」または係争標語から見ると、その商品の出所は本来の「上海老天禄」の経営者の子供が立ち上げたブランドであることを意味する。実質的意義では、商品の出所は「上海老天禄」の経営者と関係あることを表明することは、関連消費者にそのように連想させ、前掲の文言の使用は商品と特定した標識記号と連結させ、その間の連結関係を作り上げることと同じ効果と効能を有するため、実質的意義の商標使用になる。
(二)係争商標と異議商標は、実質的類似性があるため、消費者に混同されやすく、商標法第68条を違反し、商標権侵害になる。
(三)被告の行為は、商標法第36条第1項第1号でいう商標権の合理的使用にならない、その理由は以下の通り:
1、上告人が使用している係争商標は、滷味(ルーウェイ)商品に使われており、異議商標が指定している商品と類似または同じである。その中でもっとも識別性を有する部分は「老天禄」という文言であり、異議商標と同じである。これは関連消費者に連想させ、または「老天禄」商標の商品の出所と関連していることを誤認させ、「老天禄」という文言の指示的、または説明的な合理的使用ではない。
2、異議商標は著名商標あるいは独創的商標であり、上告人は係争商標または係争標語を使用することは、指示的、または説明的な合理的使用ではなく、異議商標の商品に対する信用とその知名度を利用したことになり、明らかに合理的使用になれない。
3、被告が、原告老天禄公司の会社名を完全に表示し、商標法第36条第1項第1号でいうビジネス取引慣習の信義則に合致しないと、商標の合理的使用にならない。
備考:本件は、2021年3月17日付け最高裁110年度台上字第583号判決をもって、控訴が棄却され、確定判決が言い渡された。