一、 案件の事実
優視伝播股份有限公司(以下は優視伝播社という)は、2008年に「カラメル兄ちゃん(焦糖哥哥)」を商標登録に出願し、許可された。この間当該商標を芸名とするタレントの陳嘉行氏から、「正当な事由なく使用せず、又は使用を停止し続けて、すでに3年が経過した」を理由として、経済部知的財産局へ不使用撤回審判を請求し、認められた。そのため、優視伝播社は行政訴訟を提出したが、知的財産裁判所109年行商訴字第101号判決では、優視伝播社は確かに撤回申請前の3年内に当該商標を使用しておらず、優視伝播社に敗訴を下した。
二、 法律規定
商標法第64条第1項第2号では、「商標登録後、次の各号のいずれかの情況に該当する場合、商標主務官庁は、職権で又は請求によりその登録を撤回しなければならない。……正当な事由なく使用せず、又は使用を停止し続けて、すでに3年が経過した場合。但し、使用許諾を受けた者が使用する場合はこの限りでない。」と規定されている。商標の機能及び登録目的とは、実際に使用されることによって、商標と商品・役務を消費者に連結させ、商標の識別源や品質保証及び広告等機能の実現につながり、商標の価値を表すことである。仮に商標権者は登録するだけ、その商標権を占有しても使用しない場合、他人の登録を妨害するだけでなく、商標にあるべき機能と価値を失い、撤回する事由に該当する。
商標の「使用」につき、商標法第5条は次のように定義している。「商標の使用とは、販売を目的として、しかも次に掲げる各号のいずれかに該当し、関連する消費者にそれが商標であると認識させることができることをいう。1. 商標を商品又はその包装容器に用いる。2. 前号の商品を所持、展示、販売、輸出又は輸入する。3. 提供する役務と関連する物品に商標を用いる。4. 商標を商品又は役務と関連する商業文書又は広告に用いる。前項各号の情況は、デジタルマルチメディア、電子メディア、インターネット又はその他媒介物の方式で行う場合も同様である。」。
三、 知的財産裁判所109年行商訴字第101号判決要旨
(一) プログラムにおいて「カラメル兄ちゃん(焦糖哥哥)」の文言を使うことは、商標使用に該当しない
優視伝播社は、プログラムリストやアルバムMV、DVD等「カラメル兄ちゃん焦糖哥哥)」の文言を使った証拠を提出したものの、裁判所は、それらの証拠は、陳嘉行氏が通称「カラメル兄ちゃん(焦糖哥哥)」で優視伝播社の系列プログラム又はアルバムの司会者や演技者を務めたことだけを証明することであり、しかも、前述の証拠は、「MOMO」や「MOMO親子チャンネル」等文言を示しただけであでので、消費者の「カラメル兄ちゃん(焦糖哥哥)」に対する認知は特定した個人やキャラクターにとどまり、指定された芸能マネージャー等役務や出所の識別を表彰することにはならず、商標としての使用に該当しないと判断した。
(二) キャラクターの設定や演じることは、商標使用に該当しない
優視伝播社は、プログラムにはキャラクターを多数所有しており、すべてのキャラクターは違うタレントに演じてもらい、当該キャラクターの名称の商標権は原告の所有であると主張した。しかしながら、裁判所は、各キャラクターの状況が当該タレントと約束した連携パターン及び契約の自由原則に属し、それが実際に商標使用の有無とは別の問題であると認定し、また、プログラムにおいて実際に使われた状況につき、「カラメル兄ちゃん(焦糖哥哥)」という文言は特に有意性がなく、ただ司会者や演技者として紹介され、その人物の顔の横に書いただけであるので、関連消費者には、通常プログラムやイベントの人物やキャラクターの名称として認識され、プログラムやイベントから、「カラメル兄ちゃん(焦糖哥哥)」と係争商標が指定した役務との関連性を意識することができないと判断した。
四、 結論
本件と今までの裁判所の判決から見ると、実務上では、商標が商標法第5条でいう「使用」の要件に合致するか否かについて、主に下記の点を斟酌する。1、原告の主観的意思はマーケティングという目的に使用するか。2、客観的には、商標を登録した商品や役務に使用し、かつ消費者にそれを商標として認識されるか。よって、商標権者は継続的にその商標を利用又は示したことがあっても、その利用はその登録商標の商品・役務をマーケティングするためではなく、又は消費者にそれを商標として認知してもらえなければ、いずれも商標法上でいう「使用」に該当しない。また、商標を継続的に3年以上不使用であれば、法に従い、商標撤回の事由に該当する可能性がある。