重大な商業事件を迅速・適当かつ専門的に審理するため、2021年7月1日から、〈商業事件審理法〉、及び当法の授権を受け定められる〈商業事件における弁護士の手続代理人選任に関する選任弁法〉、〈商業事件における弁護士報酬の訴訟又は手続費用に関する支給基準〉が正式に施行された。今後、商業事件は、知的財産及び商業裁判所による専属管轄となる。関連事件が会社の株主、債権者の権益等にかかわっており、対象物の金額は数億にも上る可能性があり、しかも今後の国際的通商環境及び外資の商業紛争に対する解決コストの評価、投資市場の穏やかな発展にもかかわっているため、これから実務における発展が注目に値する。関連法令の内容は、以下の通りまとめる。
一、重大商業事件の定義
〈商業事件審理法〉第2条にによると、重大商業事件は、訴訟と非訟事件に分かられているので、今後、重大商業事件は弁護士選任弁法及び報酬支給基準を適用する。
訴訟事件とは、
1. 以下の事件から生じる民事上権利義務の争議であり、訴訟物の金額又は価額が新台湾ドル1億元以上の場合。
(1) 会社責任者が会社業務を執行する事件。
(2) 証券取引法における有価証券詐欺、財務報告書又は財務業務書類不実、有価証券発行目論見書の未交付・不実、違法な株式公開買付け、相場操縦、短期取引、インサイダー取引、商慣習に反する取引、違法な貸付又は担保供託。
(3) 先物取引法における相場操縦、インサイダー取引、先物取引詐欺、有価証券発行目論見書の未交付・不実。
(4) 証券投資信託及びコンサルティング法における虚偽、詐欺、その他の他人を誤信させる行為、有価証券発行目論見書の未交付・不実。
(5) 不動産証券化条例又は金融資産証券化条例における発行目論見書若しくは投資説明書の未交付・不実。
(6) 会社法、証券取引法、先物取引法、銀行法、企業買収(M&A)法、金融機関合併法、金融持株会社法、不動産証券化条例、金融資産証券化条例、信託法、手形金融管理法、証券投資信託及びコンサルティング法等における争議であり、商業裁判所による管轄について双方の当事者が書面により合意した民事事件。
2. 公開発行会社について
(1) その株主は株主の身分に基づき株主の権利を行使し、会社と会社の責任者に対し民事上の権利義務が生じた争議事件、又は証券投資者及び先物投資者保護機関は、裁判所に、証券投資者及び先物投資者保護法により、会社の董事若しくは監査人の解任を請求する事件。
(2) その株主総会又は取締役会の決議の効力に関する争議事件。
(3) それと支配、又は従属関係を有し、会社の払込資本金額が新台湾ドル5億元以上の非公開発行会社において、株主総会又は取締役会の決議の効力に関する争議事件。
3. その他の法令により、又は司法院に指定され商業裁判所による管轄の商業訴訟事件。
非訟事件とは、
1. 公開発行会社について、株式買収価格の決定事件、会社法により、臨時管理人の選任を申立事件、監査人の指定及び解任事件。
2. その他の法令により、又は司法院に指定され商業裁判所による管轄の商業非訟事件。
二、〈商業事件における弁護士の手続代理人選任に関する選任弁法〉:手続代理人について、弁護士を選任する必要がある。
〈商業事件審理法〉第6条、第7条、第9条等の立法趣旨によると、重大商業事件は高度な専門性を有するため、商業事件を扱う法律専門能力と実務経験を有する弁護士により担当するものとしている。また調停、保全、、訴訟、非訟等の手続きを含み、今後、原告、被告、参加人等は、いずれも弁護士を手続代理人と選任しなければならない。
司法院は、〈商業事件審理法〉第10条第1項の授権を受け、〈商業事件における弁護士の手続代理人選任に関する選任弁法〉を定めている。当弁法では、選任される手続代理人は、弁護士職務を5年以上執行し、弁護士法第5条第1項各号に該当する事情、及び弁護士懲戒処分を受けたことのないことを規定している。元裁判官又は元検察官の弁護士は、その裁判官又は検察官の勤務年数を併せて計算することができる。商業事件に関する専門的知見を有する経験者とは、本弁法において、以下の事情のいずれに該当することである。
一、 本法第2条により規定されている商業事件又は重大金融刑事事件を扱った裁判官又は検察官。
二、 本法第2条により規定されている商業事件の手続き代理者、重大金融刑事事件の弁護人、商業事件仲裁手続の仲裁人又は代理人を務めた者。
三、 本法第2条第2項により規定されている商業法令に関連する法の題目の著作又は1万字以上の論文を書いた者。
四、 本法第2条第2項により規定されている商業法令の教授、副教授、准教授又は講師で、商業事件に関する科目を1年以上教え、現在兼任している、又は担当した者。
五、 本法第2条第2項により規定されている商業法規課程の単位を修得し、又は関連課程を研修する時間は180時間以上に達する者。
三、〈商業事件における弁護士報酬の訴訟又は手続費用に関する支給基準〉
司法院は、〈商業事件審理法〉第13条第1項に授権を受け、〈商業事件訴訟又は手続き費用とする弁護士報酬の支給基準〉を定めている。当基準によると、弁護士の報酬金額について、裁判所により査定され、また各事件の請求原因の事実の複雑さ、当事者若しくは関係者の人数、公益に基づいき提起する訴訟であるか、弁護士の手続に協力する状況等を検討し、その金額を決定することである。弁護士の報酬は訴訟費用の一部に計上され、敗訴した者の負担とする。なお、本基準によると、弁護士と当事者、関係者と約定した報酬の金額は、裁判所により査定された金額に制限されない。