特許法改正、パテントリンケージ制度の深化を期する

2022-06-01

2019年8月20日、「薬事法」において増訂された第四章の一「パテントリンケージ」は正式に発効された。台湾の特許の法規制を完備させ、国際的潮流に対応するため、2022年4月15日、立法院は第三読会にて知的財産に関する三法の改正案を可決した。その中には、「特許法第60条の1」のパテントリンケージ改正案

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蔡博坤

一、 改正の背景

2019年8月20日、「薬事法」において増訂された第四章の一「パテントリンケージ」は正式に発効された。台湾の特許の法規制を完備させ、国際的潮流に対応するため、2022年4月15日、立法院は第三読会にて知的財産に関する三法の改正案を可決した。その中には、「特許法第60条の1」のパテントリンケージ改正案が含まれている。

二、 分析

1. 今回の改正は、将来台湾が地域貿易協定の取組・交渉に役立つ

台湾は、2002年1月1日に正式にWTO会員国になった。加盟議定書によると、WTOの各協定を守らなければならず、その中で貿易に関する知的財産権協定(TRIPS)も含まれている。ウルグアイ・ラウンドの交渉が終わってから、新ラウンドの多国間通商交渉は開始できず頓挫した。したがって、複数国間貿易協定や二国間貿易協定といった地域貿易協定(RTAs)は、次第に新たな貿易交渉の主な領域となった。地域貿易協定の中で、日本が主導する「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP) (その前身は米国主導の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)である)は、台湾にとって最も関係している。

幅広い貿易交渉のテーマについて、TRIPS協定の現代化を促し、その包括範囲と影響を如何に調整すれば、各会員国の期待を満たすことができるかは、知的財産権の議題として交渉のポイントになる。その中で、最も重要なのは、薬品の特許保護制度を立ち上げることは重要であるが、各WTO会員国はTRIPS-Plusというより厳しい法的基準を守ってくれるか。

TRIPS協定では、パテントリンケージに関する規定を明確に定めていない。国際的な協定において、パテントリンケージに関する規定は、大抵複数国間貿易協定や二国間貿易協定といった地域貿易協定に存在している。


米国の特許法第271条(e)号とアメリカ連邦の食品、薬品、化粧品に関する立法例を参照し、CPTPP第18.53条では、一般名の医薬品が薬品の発売許可を申請する前に、新薬の特許権に権利侵害の有無について、加盟国は紛争処理システムを立ち上げらなければならないと規定されている。すなわち、後発医薬品の販売許可を発行する前に、開示・公開された特許情報に基づき、許可を発行する主務官庁と知財特許主務官庁との間に、一般名の医薬品の発売許可取得と、新薬の特許権の権利侵害の有無と連結させることによって、当該医薬品の特許の有効性や権利侵害争議をできる限り早く明らかにさせることができる。

2. 今回の改正は、台湾のパテントリンケージ制度を完備させる

台湾の薬事法のパテントリンケージ専門条項は2019年に発効したが、2022年4月特許法第60条の1が増訂される前の空白期間において、実務上では、「新薬の特許権者もしくは専属のライセンシーは、特許法第96条第1項に従い、ジェネリック医薬品メーカーに訴訟を提起することができるか」という疑問を抱えている。

知的財産裁判所は、2020年民専訴字第46号判決において、「特許権に権利侵害の可能性があり、事前に防止する必要がある場合、特許権者もしくは専属のライセンシーは、特許権が侵害されるおそれがあると認めれば、特許法第96条第1項後半に基づき、訴えを提起することができ、特許法第60条の1改正草案により、訴えの提起の根拠とすべきではない」と判示している。

しかしながら、今後当該請求権につき、争議の有無に関し継続的に司法実務の拡張解釈を通し、立法手続を回避することを防止するために、今回特許法第60条の1の増訂は、台湾の特許法パテントリンケージ制度の完備を促すことにつながる。

3. 今回の改正は、台湾の医薬品市場での公平競争関係を完備させる
本次修法應有助於完善我國藥品市場公平競爭關係

台湾の医薬品メーカーの大部分はジェネリック医薬品メーカーであり、国際的な特許製薬メーカーとの激しい競争に如何に直面するかどうかは、重要な課題である。

今回の改正では、特許法第60条の1第2項を増訂した。新薬の特許権者がP4 通知(即ち、ジェネリック医薬品の薬品許可証の申請者が当該新薬と対応する特許権は撤回すべくと申立、又は薬品許可証を申請したジェネリック医薬品は当該新薬と対応する特許権を侵害していない)を受け取った翌日から45日間に権利侵害訴訟を提起しておらず、中央衛生主務官庁に知らせなければ、将来ジェネリック医薬品が販売されたら、特許権侵害に訴えられるリスクを避けるために、当該ジェネリック医薬品メーカーはジェネリック医薬品が特許の権利侵害になるか否かについて、確認の訴えを提起することができる。

この改正は、台湾現地のジェネリック医薬品メーカーの権利を保障することにつながることが当然であるが、将来更なる台湾のジェネリック医薬品メーカーが台湾の医薬品市場での市場占有率を高めるために、増訂された特許法第60条の1第2項により、新薬の特許権者に確認の訴えを提起し、新薬の特許に挑戦するか否かについて、今後継続して見守る必要がある。