2020年12月25日、台湾の立法院は第三読会で「電子決済機関管理条例」(「電子支付機構管理條例」﹑以下「電支条例」という)を可決した。施行期日は後ほど台湾の行政院により公布することであり、関連の細部規定も台湾の金融管理委員会(以下「金管会」という)による公布を待つことである。今回電支条例は大幅に改正され、それにより国民の利用需要に対応するだけではなく、産業界のためにも業務需要を創出する。以下、その主な特徴を説明する。
1. 業務の種類の増加
科学技術が進歩するにつれ、電子金券と電子決済業務との区別が次第に曖昧になっている。今回の法改正は、国民の金融サービスに対する期待に対応するため、「電子金券発行管理条例」(「電子票證發行管理條例」)と「電支条例」の管理規制を統一した。今回の法改正を経て、電子決済機関に増加した業務項目は、以下の通り簡単に説明する。
(a)電子決済機関小口為替業務の明文化
改正前、電子決済機関が国内の消費代金の受取や支払、清算などを行う時、新台湾ドルで決済しなければならならず、それは台湾での外貨決済の禁止に相当することである。その規制対象として、代行業者(すなわち、電子決済という消費方式をを採用する業者)と利用者(すなわち、電子決済で消費する又は引き落とす者)を問わず、いずれも通貨を変換することはできなかった。今回の改正電支条例第23条では、代行業者の代金決済だけに対し新台湾ドルで決済しなければならない、電子決済機関と利用者との間、新台湾ドルて決済するとは限らないと明文に定められる。そのような仕組みにより、電子決済機関が利用者に対し小口の為替サービスを提供できるので、電子決済機関の業務範囲を正式的に広げるようになった。
小口為替業務の開放に対応するため、電支条例第19条第2項では、利用者の外貨によるプリペイドや支払いを行うための預貯金及び引落口座を緩和すると定められる。改正前の電支条例第18条第2項により、利用者の外貨預金口座しか引き落とすことができなかったものの、改正後、銀行口座以外に、利用者の同じ電子決済機関の口座から引き落とすことはできるようになった。
(b) 決済機関間の振替の開放
今回の改正電支条例第6条第4号では、電子決済機構が相互振替ることができると明確に定められるので、資金移動は便利になる。それに、改正電支条例第8条でも、機関をまたがる決済のメカニズムを明確にされる。すなわち、原則として銀行法に規範されている金融情報サービス事業が関連業務を行うことになっており、例外は、金管会と中央銀行による許可を受けたうえ、その許可された方式で行うことができる。
(c) プリペイドカードやブロックチェーンアプリを提供
改正電支条例第4条第2項第7号がでは、電子決済機構はプリペイドカードや新しい技術を応用した電子財布商品を開発することができると明確に定められる。そうした場合、電子決済機構は関連業務を執行するにあたって、より適切な法令に従うことができる。
(d)資金移動に関する情報処理業務
以前電子決済機構の営業項目には、電子決済関連技術及び情報処理業務は含まれておらず、今回の改正電支条例第4条第2項では以下の通り明確に定められる。すなわち、電子決済機関は主務官庁による許可を受けたうえ、代行業者のため情報フローの統合や共有することができる。例えば、代行業者に端末機器の提供や情報を共有すること、代行業者の代わりに利用者に情報を伝えることなどが挙げられる。その同時に、電子決済機関と利用者との間の情報共有も開放される。そのほか、改正法では、電子決済機構のポイント還元、商品やサービスの提供、商品券価額の保管及びその発行・販売・精算等サービスの提供が明確に開放される。
(e)許可を受けたうえ海外支店を設立
改正電支条例第28条によれば、電子決済機構は金管会による許可、中央銀行による同意を取得したうえ、海外支店を設立することができる。
(f)電子決済による金融商品の購入
改正電支条例第6条では、電子決済機構の金融商品やサービスの収納・振替代行サービスは緩和される。
上記の説明から分かるように、改正後、電子決済機構の業務範囲は増加し、その応用はさらに活発になり、電子決済機関にビジネスチャンスをもたらすことになる。
2. 監督管理の強化
電子決済機関の運営範囲の拡大につれ、金管会もその監督管理措置を増やすことになる。以下の通り簡単に説明する。
(a)業務ごとに階層的な制限:払込資本金額1億、3億、5億の要求
電子決済機関は特許の業種であるので、申請者は株式会社に限り、しかも一定の払込資本金額とその他の条件に達してる必要がある。払込資本金額の法規制につき、改正電支条例第9条では、下表の通り業務ごとに個別の制限が定められる。
(b)電子決済機構のコンプライアンス行動規範
電子決済機構のコンプライアンスにつき、今回の法改正は主に条項の順序とコンプライアンスの基準を調整した。すなわち、内部監査及び管理制度の立ち上げ(改正電支条例第33条)、主務官庁に定期的に業務データを申告すること(改正電支条例第34条)、クレーム及び紛争解決システムの設置(改正電支条例第29条)、主務官庁が公布した定型約款のルールを遵守すること(改正電支条例第29条)、情報秘密保持義務(改正電支条例第31条)、銀行協会が定めた準則に従いシステム設備の情報安全を保守すること(改正電支条例第32条)である。
改正電支条例第35条では、電子決済機構の財務報告につき、申告及び公告する日程が、本来の株主総会で承認を受けた15日内を、取締役会で承認を受けた15日後に繰り上げると定められるので、その管理は一層厳しくなる。
そのほか、改正電支条例第16条は旧法第15条を改正した。すなわち、小口為替業務に対し、主務官庁に関連規定を公布する権限を与え、今後電子決済機構のマネーロンダリング防止に関するコンプライアンス体制が強化となり、現在の銀行等の伝統的な金融機関に近くなると期待される。マネーロンダリング防止に対応することについては、今回の改正電支条例第36条第1項では、利用者の不法又は異常取引の関連手続きは、主務官庁の規定に従い行われなければならないと明文化される。
(c)電子決済機構のコーポレート・ガバナンスを重視
改正電支条例第36条第1項は電子決済機関の公開発行株式の基準を定める権限を主務官庁に与えた。また、同法第2項は、電子決済機関の責任者の資格、兼業制限と訓練等を規範する権限を主務官庁に与えた。そのような改正法の仕組みから、主務官庁が電子決済機構に対し、完全なコーポレート・ガバナンスを強く要求することは分かる。
3. まとめ
電支条例が改正された後、電子決済機関が営業できる項目は大幅に開放されるが、その対応するコンプライアンスの強度も上げられる。業者はビジネスチャンスをつかまると同時に、コンプライアンスも強化しなければならない。それにより、ビジネスの成長と消費者保護の両方にウィンウィンの結果をもたらすことが期待される。